2011/12/24

朝の風景/彼女の目覚め/メリークリスマス。


微かな光とそのぬくもりに、少しだけ意識が冴える。
その光の当たり具合でおおよその時間を考える。。

いつものようにカーテンの隙間から空を眺めている彼を、ベットの動きで理解する。
犬がごそごそと動きはじめる。。

おでこに温もりを感じる。
同時に少し幸せになる。。

温もりの詰まった楽園に、冷たい空気が忍び込む。
私は少しだけ眉をひそめる。。。




ふいに、淹れたてのコーヒーの香りに包まれる。
幸せな香りと、同時に幸せな覚醒が始まる。

私は、彼の大きなニットをかぶり、コーヒーの香りのする方へ歩く。


『おはよう。』
私はコーヒーを淹れている彼に言う。
『メリークリスマス。』
八重歯を見せながら彼はそう言い、私にコーヒーを差し出す。


私はコーヒーを受け取らず彼に手をまわし、キスをする。



テーブルの上には、朝食と、着飾られた小さなもみの木が輝いてる。



朝の風景/彼の目覚め-2

カフェには淹れたてのコーヒーの香りが、
ブロンジェリーにはあたたかなパンの焼けた香りが、
八百屋には瑞々しい香りが、
花屋には甘すぎずきりっとした香りが、

僕は白い息を吐きながら、冬の朝の香りを吸い込んだ。

後ろから行儀よくついて来ている犬を何度か確認しながら、
八百屋でオンディーブと枝つきのトマトを、ブロンジェリーでは焼きたてのバゲットを買い、それぞれの店主と軽く挨拶を交わした。

朝の風景。

そして最後に赤ちゃんの握りこぶしくらいの白いラナンキュラスを3本ほど買い、冬らしく軋む木製の階段を犬を一緒に駆け上り、静かに扉を開けた。

部屋の中はさっきと同様、朝の気配に満ちていた。
きっと蟻の足音さえも聞こえるだろう静寂があった。

玉葱とトマトを手頃な大きさに切り、小さな鍋の中で少しだけ炒めて、水を注ぎスープストックと入れ、塩コショウをして最後にオンディーブを入れスープを作り、
窓際にあるバジルの鉢植えから大きい葉を何枚か千切り、溶いた卵の中に入れオムレツを作った。
バゲットは半分に割り、縦にナイフを入れ、あたたかいうちにバターを塗った。

犬はバゲットを切る際に落ちたパン屑をきれいに掃除してくれた。

お湯の湧く音を確認して、ペーパーフィルターに盛ったコーヒー豆の中に注意深くお湯を注ぎ入れた。
一瞬にして、湯気はコーヒーの香りに包まれ、それは僕の鼻を通り心地よく覚醒へと導き、この部屋全体も優しく包み込み、静かに覚醒していった。







2011/12/22

朝の風景/彼の目覚め-1


カーテンの隙間から冬の朝日が差し込んで、僕の塞ぎきった瞼をじんわりと赤く染め始める。その暖かみに反応するように、僕の脳の奥底にひそんでいる、素潜りの名人が気圧に逆らわないように、ゆっくりとその光に向かって上っていく。
そうして目を覚ました僕は、そのままぼんやりと冬特有の雲ひとつない洗い立てのなシーツのような青空を眺めていた。

僕は静かに目を覚まし、静かに空を眺めていた。

足元で寝ていた犬がごそごそと僕の顔のところまで上がってきて、何かを語るように耳元に鼻を押し付けてきた。
もちろん僕には何を語りたいのかは分かっているのだけれども、
それでも毎朝、足元で寝ているのにも関わらず、いつも僕の目覚めに気がつく犬に感心して、
世界の目覚めには、全く関心がないといった感じで、静かに寝息をたて続ける彼女のおでこに軽くキスをして、冬の冷気を侵入させないよう少しだけ布団をずらし、ベットから出た。

振り返ると相変わらず同じ体制で寝ている彼女の顔の一部に朝日が降り注いでいた。
何ものも含まれていない冬の冷静な光が、彼女の透けるような白い肌をそのまま含み、持ち去ってしまうのではないかという不安にかられ、僕はカーテンをきちっと閉め直し、台所へと向かった。

僕はまず、静かに先回りしていた犬にビスケットを何枚かあげ、彼が食べている間にフラネルのガウンをはおり、やたら長い彼女のモヘアのマフラーを首に巻きつけて、厚手のウールの手袋をつけ、静かに扉を開けて犬の散歩に出かけた。


2011/12/08

朝食のための小さな準備。


1- トランプをよく切って、相手にいちばん上のカードが何のカードか憶えてもらいます。
2- そのカードをトランプの束の真ん中にさしこみます。
3- おまじないをかけます。
4- いちばん上をめくると、先ほどみてもらったカードが出てきました。

難易度 : ★(☆はあと4つ並んでいる)


僕はそれを眺め、それから種明かしの方も眺める。
そうして僕は自分にも出来そうな手品を見つけ出し、透き通った冬の空のようなピンとしたトランプをカットし始める。
とても注意深く、そしてさりげなく自然に(そう種明かしの欄に書いてあった)、僕は一連の手品の練習をする。

「あなたの選んだカードはこれですね?」

と僕は犬に言い、一番上のカードをめくる。
犬は何かをもらえると思い、出されたカードの上を黒い小さな鼻で嗅いでいる。


僕はクスクスと笑う彼女の事を想像しながら、
おまじないの言葉と、明日の朝食のメニューを考える。



2011/12/06

(ある意味では休日の)朝食。


二日前の朝食に、僕らから奇しくも選ばれなかったpain aux raisins。
オレンジジュースをいれ、温めなおしたコーヒーをカップにそそぐ。

残された犬と向かい合う肌寒い平日の朝。

アイロンをかけていないガウンを着て、僕の思いとは全然ちがう方向を向いている髪の毛。

向かいの椅子に座っていた犬は、僕がぽろぽろと落とすパン屑を期待して、足下から僕を眺めている。
急に騒ぎだした携帯には、旅行に出かけた彼女からの[ちゃんと起きてる?]の文字が浮かび上がる。

僕は少しだけ幸せな気持ちになる。

台所の隅に転がっている、ゆでられる予定だった生卵に同情しながら、僕はまたベットに戻る。




2011/12/05

My fake plastic love

夢。

毛のあまり生えてない白い犬がいた。
彼(彼女?)、、、いや、やっぱり彼女だ、
彼女には子供がいた、彼女に良く似た、毛が殆ど生えてない肌、まばらに生えてる長い白い毛、を持った子犬、、、、違う、目を離した隙に成犬になってる。

僕はその二匹を見ている、ゴムの木になって。
惨めなゴムの木。。
けど、いや、だからこそ、僕は光を感じる事が出来る。
光合成。

それが、その白い犬たちの、役に、立つとは思わないけれど。。

そこで僕は一度目を覚ます。

別の夢。

今日、いや、明後日、僕の知っている犬が死ぬ、らしい。

白い長い毛を持った、いや、白く縮れた毛を持った犬だ、僕は何故だか彼の事を昔から知っている。

僕は思う、君が望むような人間になれたらと、
彼女は言う、あなたの望むように生きなさい、と。

けど、きっと明後日には僕の知っている、仲間が、一人いなくなる。


僕は思う、そういう別れ、別れ?
そのあたりの出来事をひっくるめて、見続けようと。
だって僕はゴムの木。
その気になればなんだって出来る、さ。


2011/11/22

トノに捧げるうた。




11回目の11月22日。


毎年変わらず、、、いや、毎日変わらず思っているよ、


今年で11回、、、いや、本当は20万回くらい思っているよ、


産まれてきてありがとうって、


誕生日おめでとう、トノ。





2011/11/16

迷い犬探してます。



弟の飼っているフレンチブル(4ヶ月)を探しています!
千葉県方面です!
見つけてくれた方には、うちのニット差し上げます。

情報ある方はメール下さい。
info@junokamoto.com

詳細は以下の通りです。

いなくなった場所
千葉県千葉市中央区村田町
神明神社付近

いなくなった日時
11月4日 18:30頃

いなくなった時の状況
大きな音に驚いて抱きかかえてた腕の中から飛び出し村田町公会堂方面へ走り去る

犬の特徴
名前:プティ
種類:フレンチブルドッグ
性別:メス
年齢:4ヶ月
性格:人懐こく遊び好き
名前を呼ぶと近寄ってくる

いなくなった時の服装
ワインレッドのタータンチェック柄の服を着用
首輪は無し

よろしくお願いします。

2011/11/07

JUN OKAMOTO BLUE 的な告知。


カーテンの隙間から飛び込んでくる朝の太陽の光は、
すでに夏の野暮ったさはなく、
薄く透き通った太陽の光に変わっていた。
選択される音楽はロックからクラッシック
の割合が増し、
コーヒーを淹れる度に辺りは湯気で白くなっていった。

トノだけが相変わらず太陽の光を一身に受け止め、夏の犬みたいに舌を出して外を見ていた、、と書いたところで振り返ると、もう寝ているんだけれども。。

だいぶ遅い足取りだけど、確実に冬が近づいてきてますね。
僕も、今年の冬みたいに遅い発信で申し訳ありませんが、、告知を二つ。


carousel 4
です。
と、楽をして告知しようとしても、中々うまくいかないですね。。
半分しか見れないですね、、小さくするやり方もわかりません。。


タイトル:イセタン ジャパン センスィズ 伊勢丹創業125周年
“包んで、結んで、開いて。ふふふ、ふろしき祭”×LOVE FOR NIPPON FASHION

日程:2011年11月9日(水)~15日(火) 7日間 
会場:伊勢丹新宿店本館7階=中央エスカレーター脇特設コーナー
企画内容:LOVE FOR NIPPONと伊勢丹が継続して実施する様々なチャリティイベントの第二弾。
     伊勢丹創業125周年の企画にLOVE FOR NIPPON FASHIONが参加。
     LOVE FOR NIPPON スターターを中心としたクリエイターたちによるオリジナルふろしき作品の
     チャリティ販売を伊勢丹新宿店本館7階=中央エスカレーター脇特設コーナーにて行う。

主催:一般社団法人LOVE FOR NIPPON
http://www.lfn.jp/

協力:株式会社三越伊勢丹

寄付の使用先について:
チャリティの売上金のうち、風呂敷制作費及び運営・運搬にかかる諸費用を除いた全額を、
ラブフォーニッポンを通じて東日本大震災の被災地への復旧、復興支援に役立たせていただきます。
なお、風呂敷を制作する作り手それぞれの意向/想いで具体的な支援先を決めています。
それはタグの色でお客さまにも見分けていただける事ができるようになっております。


前回の左右違う色の洋服をくっつけたシリーズの第二弾で、今度は別々のBLUEラインのプリント生地をくっつけた風呂敷を作りました。
今回は限定4枚。

あっ、もう少し大きく、、限定4枚です!

被災地も徐々に復興に向けて進んでいるとは思うのですが、
その何倍も早いスピードで、どんどんどんどんどんどん忘れ去られている気がします。
そんな中、大きな風呂敷をきちんと広げて(今回の風呂敷にかけてみました。。)活動を続けているLOVE FOR NIPONに僕はつくる事で参加させてもらい、みなさんは買う事で記憶に残し、復興の援助をしてもらえたらと思っています。


もうひとつ

11月13日(日)・14日(月)に神戸ファッション美術館で開催いたします会員大会の詳細が決まって参りました。'コラボノカタチ'というサブテーマにもあるように、今年は様々なジャンルの表現者とさをり織作家で創り上げる、今までとは趣の異なる大会になることと思います。

皆様、是非ご参加ください。

■□パフォーマンス&トークショー□■

2011年11月13日(日)13:30~16:00(受付13:00~)

会場 神戸ファッション美術館 5Fオルビスホール

参加費 2,000円(一般)・ 1,000円(会員)

<主なプログラム>

1.SAORI×Amoeba さをりの仲間とアモエバダンサーズによるコラボダンスステージ

2.ファッションショー

3.トークショー

 コメンテーター(予定):
 佐藤知子(Amoeba)、岡本順(JUN OKAMOTO)、サトウセイゴ(miraco)

 田中よう子(Granpago)、赤井美智子(COOP SAORI) 他

 コーディネーター : 城哲也(NPO法人さをりひろば)


という事で、僕の苦手なトークショーです。。
まぁ今回は他のコメンテーターの方もいらっしゃるので、大丈夫だとは思いますが、今回は人見知りとの戦いになると思います。。
そしてファッションショーでは、さをり織りを使用したアーカイブの作品を6体ほど出展させてもらっています。

他にも、色々な催しがあると思うので、お近くの方は是非足を運んでみてください。









2011/10/24

2012SS展示会@恵比寿さま。



おはようございます。
第一回の展示会無事終了しました。
再開出来た方々、新しく出会った方々、これからよろしくおねがいします。
サンプル制作を熊本でおこなっていたため、10日くらい前の金曜日に東京に戻ってきました。
それから、シューティングして、展示会して、はじめましてやひさしぶりやときめきを繰り返し、昨日は弟の結婚式でした。
そして、三番目の弟夫妻のおめでたもあり、僕とトノには妹と甥っ子が一気に増えました。

個展スタートです。

FOR BUYER&PRESS
10/25(火)〜10/27(木)11:00〜20:00

FOR PRESS&FRIENDS
10/28(金)〜10/29(土)11:00〜20:00

@gallery POINT
東京都渋谷区恵比寿西1-4-7

今回は自作のストーリーに合わせたコレクションとなっています。
全てが泡に見えてしまう「彼」から見えるドットの世界と、ふたりの挑む朝食の風景を是非見に来てください。



『頭の中に泡がありますね』医者はいとも簡単にそう僕に伝え、簡易に包装された包み紙を渡した。
家に帰り包装を解いてみると目薬が入っていて、ラベルに「CHAMPAGNE / 1975」とだけ記載されていた。
僕はその目薬を口から流し込みたいのを我慢して、一滴もこぼさないよう注意深く目に差した。

朝早く目が覚めて、太陽の光を浴びようと窓へ向かった。
朝露のベールに包まれた薄いカーテンは、いつもにもまして爽やかに揺れていた。
僕はそのプチプチとしたドットで出来たカーテンに手を、、、
と、僕はそこで気がついた、僕の目に映るものが全てシャンパンに飛び込んだような泡(ドット)の世界になっている事を。。

彼女はいつも朝食が出来上がる頃に起きてくる。
彼女は起きると、水を飲んだ後の猫みたいにさっと顔だけ洗い、朝食の為の洋服を選ぶ。
もちろん僕もきちんと着替えて朝食を準備する。
これは僕たちの小さなルールなのだ。
今日の彼女は、シャンパンの中で立ち上る泡のようなワンピースを着ていた。
僕はそれより少し大きいドットのシャツと、ゆったりとして裾にまだ泡が残っているパンツをあわせた。
『おはよう。』
彼女は殆ど口を開けずにそう言い、席に着いた。
僕は少し冷えたシャンパンをグラスに注ぎ『おはよう。』と返した。



少し長くなりましたが、
JUN OKAMOTO 2012S/Sはこの3つのストーリからイメージしました。
「男」の差したシャンパンによって見えてくる泡(ドット)の世界、
そんな事とは知らずに毎朝の朝食の為に注意深く着るものを選ぶ「彼女」。
そんな二人のストーリーです。

今回から本格的にメンズラインも始動し、メンズ、レディース共に
充実したラインナップとなっておりますので
是非みなさまお誘い合わせの上、ご来場ください。


CONTACT //
JUNOKAMOTO
junokamoto.com@gmail.com












2011/10/18

2012SS展示会


JUN OKAMOTO 2012SS 展示会『朝食・シャンパン・日々の泡』へのご案内

DATE1
FOR BUYER&PRESS
10/18(火)〜10/20(木)11:00〜20:00
10/21(金)11:00〜18:00

@roomsLINK/ブースNO,B-19
東京都渋谷区東1-2 ベルサール渋谷ファースト

DATE2
FOR BUYER&PRESS
10/25(火)〜10/27(木)11:00〜20:00

FOR PRESS&FRIENDS
10/28(金)〜10/29(土)11:00〜20:00

@gallery POINT
東京都渋谷区恵比寿西1-4-7

『頭の中に泡がありますね』医者はいとも簡単にそう僕に伝え、簡易に包装された包み紙を渡した。
家に帰り包装を解いてみると目薬が入っていて、ラベルに「CHAMPAGNE / 1975」とだけ記載されていた。
僕はその目薬を口から流し込みたいのを我慢して、一滴もこぼさないよう注意深く目に差した。

朝早く目が覚めて、太陽の光を浴びようと窓へ向かった。
朝露のベールに包まれた薄いカーテンは、いつもにもまして爽やかに揺れていた。
僕はそのプチプチとしたドットで出来たカーテンに手を、、、
と、僕はそこで気がついた、僕の目に映るものが全てシャンパンに飛び込んだような泡(ドット)の世界になっている事を。。

彼女はいつも朝食が出来上がる頃に起きてくる。
彼女は起きると、水を飲んだ後の猫みたいにさっと顔だけ洗い、朝食の為の洋服を選ぶ。
もちろん僕もきちんと着替えて朝食を準備する。
これは僕たちの小さなルールなのだ。
今日の彼女は、シャンパンの中で立ち上る泡のようなワンピースを着ていた。
僕はそれより少し大きいドットのシャツと、ゆったりとして裾にまだ泡が残っているパンツをあわせた。
『おはよう。』
彼女は殆ど口を開けずにそう言い、席に着いた。
僕は少し冷えたシャンパンをグラスに注ぎ『おはよう。』と返した。


少し長くなりましたが、
JUN OKAMOTO 2012S/Sはこの3つのストーリからイメージしました。
「男」の差したシャンパンによって見えてくる泡(ドット)の世界、
そんな事とは知らずに毎朝の朝食の為に注意深く着るものを選ぶ「彼女」。
そんな二人のストーリーです。

今回から本格的にメンズラインも始動し、メンズ、レディース共に
充実したラインナップとなっておりますので
是非みなさまお誘い合わせの上、ご来場ください。


CONTACT //
JUNOKAMOTO
junokamoto.com@gmail.com

PRESS
PR01.
03-5457-0676

2011/10/04

猫のはなし。

キンモクセイの香りが漂う穏やかな秋ですね。

街では気の早い花屋さんはもうクリスマスの準備を初めていて、
もっと気の早い魚屋さんは荒巻鮭の事で頭がいっぱいになっているし、
さらに気の早い国立公園では桜の開花日の事に心を奪われる。

そんな風に色々な事に思いを巡らせれる、秋ですね。

ただもっと気の早い僕らは、来年の春夏の展示会シーズンに突入しています。
なので今は毎日梨を食べながら、上がってくるサンプル(ニャァ-)を眺めながら、ボタンを(ニャ)決めたり、もう少し丈を伸ばそうか(ニャ-)なんて考えな(ニャ-ニャ-)
、、、ほんとは猫の事ばかり考えています。。


先日迷い猫を保護しました。
場所は熊本です。
僕も何度か子猫を保護して里親を探したことはあるのですが、3匹まとめては初めてで、ビビっています。
けど今までの子猫たちと違い、最初から人馴れしていて、毛並みも良く、動物の兄弟ってこんなに仲がいいんだって感心するくらい、仲良しです。
雄1匹に雌2匹です。
とはいっても、もちろん1匹でもいいですので、どなたか興味がある方がいたら連絡もらえると嬉しいです。

熊本のアトリエで保護していて、随時情報を更新しているので、ブログをチェックしてみて下さい。

<連絡先>


アトリエプラスワン  熊本市平成2-7-23


メール:  atelier_puls_one@yahoo.co.jp


電話: 096-379-0508


ちなみにワクチン済みで、ノミのいないのも確認済みです。

よろしくお願いします。


(ニャ--)!




ワン。


2011/09/25

泡のはなし-2


『頭の中に泡がありますね。』

その医者は、このコーヒー砂糖が入ってますね、と言うくらいの感じで、僕にそう伝えた。
数日前から僕の頭の中では、パチパチという音が鳴り響いていて、終わる気配がなかったので、気になって病院に行ってみると、案の定、変な病気だった。

仕方なく僕は、やれやれ、と口にして家に帰った。

今のところ、その泡が僕の生命にどう関わっているのかはよく分からなかった。
医者もそれについてはきちんと答えてくれず、、いや、きちんと説明してくれたのだろうけど、頭の中の泡のせいなのか、最近はすぐ忘れてしまう。
きっとパチパチと記憶がはじけてしまっているのだろう。
僕はそう思って、ひとりでクスリと笑った。こういうときの僕は人一倍楽天的にもなれるんだ。

ポケットの中を探ると、一枚の紙が出てきた。
その紙には、ミミズの様にか細く、くねくねと読みにくい字で何か書いてあった。
どう考えてもそれは僕の字だった。
頭の中でパチパチとしていてもしなくても、僕の字はやっぱり読みずらかった。
僕はそこに書いてある事を、パチパチが酷くなりながらも根気よく読んだ。
そしてそこに書いてあったように、パチパチが酷くなってきたら差すようにと書かれている目薬を取り出した。
内容物にシャンパンと記載してある。
しかも1975年もののヴィンテージシャンパン、偶然にも僕の生まれ年だ。
当然、僕はそれを出来る事なら味わってみたかったけど、パチパチという音に嫌気がさしていたので、そのシャンパン目薬を差した。
差すと今度は、目からパチパチが広がり、かわりに頭の中のパチパチが遠ざかっていった。
僕はパチパチとし始めた目で、もう一度、僕の殴り書きの処方箋を読んだ。
そのシャンパン目薬のお陰でへろへろな字はぷちぷちに変わって、泡から何かを理解する能力は僕には無いので、諦め、僕はパチパチした目のまま辺りを眺めた。
無表情で風が入って来てもピクリとも動かないカーテンは細かいドットになっていて、相変わらずピクリとも動いていないのに、気のせいかプチプチと揺れていた。
昨日から置いたままのワインのボトルは赤いドットに包まれていた。

僕は試しに目を閉じてみた。
目を閉じると、予想に反して真っ暗な暗闇が広がっていた。
ここ数日間悩まされていた、パチパチという音はどこかへ行ってしまい、今僕を悩ませている、目の前のパチパチも消えていた。

どれくらい経っただろう『ただいま、』という彼女の声が聞こえ、僕は『おかえり』と言って目を開けた。

『そのシャンパンの泡で出来たようなワンピース、凄く素敵だね。』

僕がそういうと、彼女はため息をついて、シルクサテンのベージュのワンピースをするすると脱いで、部屋着に着替えた。


明るいシャンパンのはなし。

2011/09/20

2012ss


薄いベールの様な冷たい湿気に包まれた気持ちのいい朝、
いつもと同じテーブルに座り、いつもと同じシャンパンを注文した。

僕は朝にシャンパンを飲むのが好きだった。
透き通ったグラスに立ち上る数本の気泡の筋を眺めるのが好きだった。
テーブルに映る陰の中にある、白黒の泡を見ているのも好きだった。

そう、結局のところ僕の泡、、いや、朝は、シャンパンの気泡を眺める事から始まる。

そんな事をぼんやりと思っていると、僕の前に一匹の猫が立ち止まり僕の方をじっと見た。
僕らは1分ばかり見つめ合い、彼女(たいていの猫の事は彼女と呼ぶようにしてる)はあくびをして何事もなかった様に通り過ぎた。

いつもと変わらない朝だ。

いや、不意に頭の中に鉛色の雲が立ちこめている事に気がついた。

僕はため息をつき、前に別れた彼女(この場合は人間の女性を指す)に関する、無数の蟻のような思い出たちが、、、

-久しぶりに再会したとき、彼女は昔と同じように、一点の結び目もないような黒くて長い髪をして、、、

眺めていた気泡が割れた音が聞こえたような気がして、僕は我に返った。

思い出に浸る、、いやそんなもんじゃない、思い出の熱湯に足を入れている事に恐怖を感じた僕は、諦めの悪いイタチの様に頭を振り、真っ黒な水中メガネを装着して、シャンパングラスの中に飛び込んだ。
水面にゆらゆらと立ち上っていく泡とは逆に、僕は底の方目指して泳いだ。
さっきまで眺めていた泡は、僕の気も知らず次々と僕に体当たりしては割れていった。
僕はやっとの思いで底に辿り着き、上を眺めた。
水中メガネのせいで暗くなっていたが、小さくて華奢な感じの泡たちは、華奢なのは変わりないが少しだけ大きくなっていて、外から見ていたのとは違うドットになっていた。
僕は何も考えず少しの間それを眺め、深呼吸をして目を閉じた。

真っ暗だった、ただ、一筋の気泡だけが残像の様に上っていた。

ノルマンディー地方の冷たく冷酷な波のように押し寄せていた記憶のかけらは無くなっていた。
冷酷な記憶は、シャンパンの泡の様に底から次々と立ち上がってくるけれど、いずれ空気となる。


今日は悲しいシャンパンの泡のはなし。



2011/09/13

LFN FASHION×ISETAN




■LOVE FOR NIPPON FASHION×ISETAN
日程:2011年9月14日(水)~16日 3日間
会場:伊勢丹新宿店メンズ館8階=イセタンメンズレジデンス
参加ブランド:archi、Hamiru、HEX ANTISTYLE、HYSTERIC GLAMOUR、JUN OKAMOTO N. HOOLYWOOD、PHENOMENON、plumpynuts、suzuki takayuki、UNDERCOVER、White Mountaineering、Yuge



震災から5ヶ月くらいが経とうとしています。
僕は普段、熊本にいる事が多く『5ヶ月くらい、、』というのが、恥ずかしいですが、正直な感覚です。
西日本にいると、大々的に活動している場所もなく、勝手にイメージの中で被災地は勝手に復興出来てるんじゃないかと思ってしまいそうになります。。
もちろん西日本に限らず、ですが。。
そんな中、LFNの活動報告や、その他の東京の友人の被災地への活動を見ていると、緩み始めていた心をギュウっと掴まれます。
皆で手を取り合わないとビクともしないくらいの大災害に対して、もう一度ひとつになれたらという願いを込めて、
元は別々だった洋服を真ん中からつなぎ合わせてひとつにしました。


という気持ちでひとつにしました。
全て対になるコがいるので、2点づつの販売になります。












2011/09/11

胃もたれとショパン。

やぁ、久しぶり。

やぁ、ただいま、かな?

随分長い間、ものを書く事を楽しんでして、ブログというか短編小説みたいになっていました。
誰のブログか?という感じですね、僕もそう思います。
というか、そもそもブログって何なのか?
調べてみたら『その人の日常にあった出来事を日記のように書く云々カンヌン、、、』
みたいな事が書いて、、、すみません、、ウソです、調べてません。

ただ、ああいう事を書くようになり、心配してくれる人や、意味が全く分からないという人や、いつも何を考えてるの?という人や、本当に走っているの?という人なんかもいて、
これからも続けていきたい思っています。

よろしく。

これを読んでくれた人は、また雰囲気変わったね?と思ってくれるかもしれません。
ですね、けどまぁ僕の中では髪型が変わるようなものなのかなぁと思いマス。


さて、今日は珍しく朝マックを食べ、リアリティバイツのサントラを聴き、
気持ちのよいスタートだったのですが、
1時間後には胃もたれとショパンのピアノに変わっていて、
いつもの二日酔いの日曜日の朝みたいな気だるさを感じつつ、トノのまるい頭を見ながらソーセージマフィンを恨んでいる昼下がりです。
ビールでも飲みたい良い天気なんですが、今日はwallflowerの温かい木の床をコツコツと鳴らしながら店番をしています。
目の前のパソコンの左側には、10年くらい前にパリで買ったmark borthwickの写真集が置いてあって、その向こうの窓には自転車に乗った少年が通り抜けます。
店内の音楽はショパンからシガーロスに変わっていて、トノは僕の膝の上に移動していて、相変わらず、まるい頭を僕に見せています。

そういえば、JUN OKAMOTOの秋冬ものの出荷がほぼ終わったので、最後に書いておきますね。
お近くの方は是非見に行ってみて下さい。
きっと気に入るはずです。

wallflowerは手取神社の参道沿いになるのですが、同じ通りにテラス席のあるbarがあります。
昼間は神様の手前、遠慮しているのか暗くならないと開かないbarで、終わったらビールを飲みたいですね。
さっきの自転車の少年の向こう側には一本の木が見えていて、
ビールのラベルに使えそうなくらい爽やかな緑に癒されます。

それでは、また。



-japan-
barneys new york
iena

-tokyo-
isetan tachikawa
monster in my daydream

-kansai-
the galaxy harmony

-hokuriku-
iroha
seaberth
trois roche

-sikoku-
vishnu

-kyushu-
contessa ricca
sabbath
lurachuna
sign of the times
ever grey
elega

-usa-
h.lorenzo

-taiwan-
03

-web-
charmworld
nuan+

2011/08/27

8/27



やっぱり晴れた。




2011/08/24

8/27,28


6/23 晴れ

僕は寝起きで相変わらずの二日酔いの頭を抱えたまま、彼女を眺めていた。

『おはよう。』
僕がそう言うと、背中を向けたまま彼女も同じ言葉を返した。

『これどう?』
彼女は相変わらず背中を向けたまま、肩がオシ
ロイバナみたいなワンピースを僕に向けて掲げた。

『んー、水色のやつかな?』

僕がそう言うと彼女はうなずいて、
新鮮なレタスの表面みたいに凹凸のある六月の晴れ間みたいに鮮やかな空色がベースのチェック柄のワンピースを選んだ。


7/15 晴れ

どこまでも晴れ。

僕はぼんやり彼女を眺める。
2,3日前に前髪を切り過ぎたと言って、僕の方をなかなか見てくれない彼女は、今日も背中を向けたまま真剣に洋服を選んでいた。
前にドレープのたっぷりあるワンピースを、真っ白いハンガーにきちんと掛け直して、彼女は僕の方に見せた(もちろん、前髪は見せてくれない)。
僕は、まだ太陽が出たばかりの冷たい空気に揺れているカーテンの様にしなやかに揺れている白いレースを選んだ。

それを手にとった彼女の、切り揃えられた前髪も同じ様に揺れた。


8/20 雨

『片付けの嫌いな神様がいてね、水のたっぷり入ったバケツを部屋中に置きっぱなしにしているの。そしてね、飼っている猫かなんかが片っ端からバケツをひっくり返してるのよ、きっと。』

真剣な眼差しで窓の外の土砂降りを眺めながら、彼女はそう言った。

土砂降りの眺めた後の彼女は少しだけ機嫌が良くなり、いつもより軽快なステップを踏みながら、彼女は洋服を選び出した。

彼女の選んだカーディガンを見て、僕はため息で飛んでいきそうなくらい軽くて薄いシフォンに行儀よく水玉の並んだ生地を選んだ。


8/27,28 たぶん晴れ

wallflowerに2012AWの新しいパターンと生地が
揃いました。
今回からメンズも少し始めました。

それに伴い、8/27,28日に僕もお店に立ちます。

壁の花になるお手伝いが出来たらと思っています。
興味のある方は是非お越し下さい。

wallflower by jun okamoto
〒860-0845
熊本県熊本市上通町3-21, 1F
096-223-5642

トノもいます☆




2011/08/06

扉。


扉と見ていると、パリのquincampoix通りに住んでいた時を思い出す。
そこには、どこかの伝説的な勇者が銅像になった時にみんなが揃って持っている盾みたいに大きく、その盾に必ずついている獰猛なライオンが牙を剥き、どこかの国で威張っている戦車みたいな深い緑色をした、大きな大きな扉があった。

両親はその扉を300年以上前の扉だとよく自慢していたが、
僕にとってはそんな事はどうでもよく、出かけるときは重いだけでうんざりするような扉だったんだけれども、
帰ってくる時には、大きな口を開けて出迎えてくれるライオンに僕はいつも『ただいま。』と言うようになり、当時フランスに連れてこられたばかりで学校の連中にも馴染めなかった僕には唯一の話し相手だった。

なんて事を、つるりとペンキを塗られた無感動な扉の前で立ったまま、不意に思い出していた。
彼女が閉めて出て行った扉を眺めながら、僕は酒を飲み彼女の帰りを待った。
どれくらいの時間が経っただろう?
彼女が出て行った時の暗く重く静まりかえっていた夜は明け、明るく生命力にあふれた朝を迎え、太陽はパリにあったライオンの扉みたいに高く登り、やがて沈んでいった。

僕は仕方なく扉に話しかけてみた。

『帰ってくるかな?』

『......』

その無感動なほどつるりとした赤ん坊みたいな扉は、当然だけど、何も言ってくれなかった。
ライオンの扉にさよならを言ってから、たくさんの時間が経ち、たくさんの扉が過ぎ去ってしまっていた。
僕はたまらなくあのライオンのついた扉を見たくなった。

僕は明日の分までため息をつき、つるりとした感触を確かめながら電話を持ち、彼女に電話をかけた。



彼の手にしている電話には、色々な動物の描かれている白いケースが付いていた。
けれど、ここにもライオンの姿はなかった。


という事で、僕がディレクションをしている熊本のセミオーダーのお店『wallflower』で販売しているiPhoneケースが通販出来るようになりました。

そして今、iPhone以外の16機種のスマートフォンを
対象にした受注会を行っています。
8/22までです。

詳しくはwallflowerのブログを見てください。

『かわいいケースってiPhoneばかりでつまんないわ。』

と思っていた貴女、この機会に是非。



2011/07/27

2011-12AW/ 第一弾取り扱い店舗。



男話しかける。『ねぇ、今日は何曜日、、いや、何月だっけ?』

女は答える。

『7月27日、ついでに言うと水曜日。』

男『そっか、やっぱり。もうそろそろかなと思ってた。』

女『何が?、、、ねぇ、それより朝ご飯が食べたい。』

男『あっ、ごめんね、ちょっと待ってて。』

男はパタパタとスリッパの音をたてながら小さいながらも愛着のある台所に向かう。
冷蔵庫を開けて中身を確認して、頭の中で献立をたてる。
その間にオレンジジュースを彼女の前に持っていく。

女『ありがと。』

台所に戻った男は、夜の間犬の様に眠っていた野菜たちを取り出し、レタス、アスパラガス、トマトの順に洗い、アスパラガスの為にだけ鍋にいれた水を沸かす。

女『おいしい、このオレンジジュース。』

『そう?よかった。』男はレタスを千切りながら答える。

『そういえば、さっき言っていた、そろそろ、って何?。』オレンジジュースを注ぎながら話しかける女。

『?』トマトを切り終えた男は、彼女の質問をもう一度頭の中で反復して、答えを探す。

『あぁ、さっきのね、そろそろJUN OKAMOTOの2011-12AWのデリバリー第一弾が行われるんだよ。プリント物を中心に!』

『へぇ、どこで?、、、ねぇ、コーヒーが飲みたい。』

男は既にガラスの容器の下に落ちてしまっている優しい黒い色をした液体を女の前に運び、真っ白なマグカップの中に出来立てのコーヒーを注ぐ。

『都内だと、BARNEYS, IENA, monster in my daydream, ISETAN 立川店 ,,,,,』

そう言って男は台所に戻り、朝食の準備を再開する。
茹で上がったアスパラガスは氷水を潜り、フレッシュな緑色を取り戻し、レタスとトマトの中に入れられ、次の出番を待つ。

『あっ、あと君の地元にも!宮崎のSabbath!それに大分のcontessa ricca, 熊本のlurachuna, 福岡のsign of the times ,,,』

『へぇ、宮崎にもあるのね。ママに伝えておくわ。』

『メルシィ、マドマァゼル!』そう言って、宮崎の小さなお店にフランス人の大女が入っていくところを想像して少し吹き出す男。

充分に熱されたフライパンにオリーブオイルを垂らし、卵を割り入れる。

『それから、大阪のThe Galaxy Harmony, 石川のiroha, 富山のSEA BERTH, あとはweb shopのCHARMWORLDnuan+。』

『取り扱い店舗はまだあるけど、残念ながら一回目の商品が入っていないんだ、、だから他のお店で商品が見れるのは8月後半かな。』

そこまで言い終わり、フライパンの蓋を取ると、だいぶ色白になった目玉焼きが二つ、出来上がっている。
岩塩と黒こしょうにオリーブオイル、バルサミコ酢に上品に和えられたサラダと、焼き上がったばかりのトーストを一緒に食卓に並べ、男はやっと女の前に座る。

『ボナペティ。』
男は彼女を見つめ、そうつぶやく。

『ありがとう。』
ニコリと微笑み、女は目玉焼きにナイフを入れた。










2011/07/20

置き手紙。

目が覚めた。
反射的に、と言ってもひどい二日酔いの割にはだけど、僕は時計をみた。

10時半。

何時に寝たかも思い出せない僕は、
セメントで作ったように頑丈なカーテン(これは彼女が選んだものだ)が見事に光を遮っていて、
10時半というのが、朝なのか夜なのか判断が付かなかった。


2日間ほぼ寝ないで割と大きな仕事を終わらせた僕は、疲れてはいたけれど気分良く、前々から約束していたディナーに向かった。

基本的に食べる場所などはどうでもいい僕に、彼女は予約なんかはわざわざしなくて良い所をいつも選んで連れて行ってくれていた。
注文なんかも殆どが彼女がしてくれたし、僕はそれを食べて飲んでいるだけでよかった。

『私わりかしこういうの得意なの。』

彼女はいつも食べる僕を見ながら嬉しそうに言っていた。

うん、
人に才能のグラフかなんかがあったとしたら、確かに君のそういう選ぶセンスみたいなものは飛び抜けているはずだと、僕は思うよ。

僕は黙々と出ているものをきれいに片付けながら、そういう事を考えていた。


だけどその日(きっと昨日だ、)は○月○日の20時から何か特別美味しいものを食べたいからあなたにどこか選んでほしいと言われ、
僕は、僕なりに色々と調べてあるお店を予約した。

綺麗にアイロンのかかった白いシャツを着たギャルソン風の格好をしたウエイターに席まで案内させられ、
その日は約束通り、僕が食事とワインを選んだ。

きりっと冷えた白ワインと、白アスパラガスを茹でてオリーブオイルをかけただけの料理と、
生ガキを僕ら二人は分け合って食べた。
それから舌平目のムニエルを彼女が、僕はイワシを焼いたものを食べた。
どれもきちんと調理されていて、自分で選んだわりには当たりと言えるレストランだった。

ただ彼女は一言も口を聞かず黙々と食べ続けていた。

『おいしいね。』

と僕は試しに聞いてみたけど、彼女は話すかわりにニコリとしただけだった。
仕方ないので僕は、食べる事と飲む事に集中することにした。
だからその日は話さない代わりにやたらと酒を飲んだ。
そのレストランにある白ワインが全部なくなってしまうんじゃないかというくらいに。
コーヒーを飲み終わると、僕らは適当にbarに入り、また酒を飲んだ。
僕らはボーリングが出来そうなくらい空のワインボトルを並べ、bob dylanのアルバムを聞き終わるより先にウイスキーのボトルを空にした。


というのが、ベットから立ち上がり、セメントのようなカーテンを開け、今が朝の10時半だと分かるまでに思い出せた事だ。
そして僕は、朝だと分かったとたんに急激な喉の乾きを感じ、その日が終わってしまうんじゃないかと思う程長いため息を付き、台所に向かった。
冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し一気に飲んだあとに、テーブルに目をやった。

そこには一人分の見るからに冷めた朝食と、一枚の置き手紙が置いてあった。

2011/07/09

言い訳。

暇だ。

最初に出された水からは、僕の占拠しているテーブルの上を縦横無尽に水滴が攻めてきて、
僕の飲んでいたビールのグラスは片付けるのが追いつかない程、急ピッチで増えていった。

カオス、

を見事にテーブルの上で作り上げた時、携帯電話は既に僕に語りかけるのを諦め、
持って来ていた読みかけの本は行間まで読み終えた僕は、他にやる事も無く、
見える限りのそこにいる客とスタッフの動きを完全に把握してしまっていた。
小綺麗に髪をまとめた耳のかたちのいいウエイトレスは、遠慮がちに何度も僕に話しかけてくれたのだけれども、
何か欲しいものがあるときは自分から頼むから、と言って以来ぱたりと姿を消した。
僕は十分すぎる程苛ついていた。。
コップの周りから溢れ出す水滴も、空のコップも、空の灰皿も、会話が出来るんじゃないかと言うくらいまで眺めた。
もう僕にはこれ以上時間を潰す方法を思いつく事は出来なかった。
それを見つける事が出来たら、きっと僕はそれを本にでもして、、、そうか、小説の続きを書こう、と僕は思い、、
なんて、僕は小説家でもなければ、小説をまともに読んだこともないんだった。

これ以上つまらない事を考え出すと周りにも迷惑になると思った僕は、諦めて電話をかける事にした。

『やぁ。』

彼女はまるでさっきまで一緒に過ごしていた恋人みたいに親密な甘い声で、僕に200回目の言い訳をした。

日は沈み、他にする事も思いつかないので、僕は耳のかたちの綺麗なウエイトレスを呼び、さっきの自分の態度を謝罪し、
テーブルの上の邪魔なものを下げてもらい、新しくこの店で一番冷えたビールを頼んだ。

冷えた旨いビールを一息で飲んだ僕は、彼女を好きな自分に呆れて、小さなため息をついた。

2011/07/06

煙草。


雲を絞ったように降り続ける雨。
僕はぼんやりと、吸わない煙草を吸う振り
をしてみる。
隣に座っている犬は、遠くの何かを探しているといった風に僕の吐き出した風の意味を探る。
僕は彼女が唯一置いていった青空みたいに青いワンピースを眺める。


彼女はたしか

『このワンピース、雨みたいな色ね。』

と言った。

僕はたしか

『そうだね、青空みたいな色だね、』

と答えた。



その頃の彼女がみる青空には、いつも厚い雲が広がっていたのかもしれない。

今の僕のこころみたいに。



2011/07/04

目玉焼き。


いつ始まったのか思い出せないくらいの、長い長い二日酔いから醒める間もなく迎えた新しい朝、

僕はいつものように

『おはよう。』

を言い忘れ、

彼女が作ってくれた、きっとため息の分だけ固くなった目玉焼きを無感動に食べながら、少しだけ笑顔の練習をしてみる。

『美味しいね、』

なんて、信じてもらえないのを分かりつつ、僕は口に出してみる。

『ありがとう。』

と言いながら少しだけ笑った彼女に、僕は少しだけホッとして家を出た。


彼女の笑顔と苦いコーヒーのお陰で、少しだけまともに戻った頭で僕はここ数日間引っかかっている何かを思い出そうと試みてみる。

僕のこの数日間の深酒は、その何かを思い出さなくてはという脅迫観念から飲んでいたんだと思う。
酒を飲むことによって、その頭の奥のフックに手が届くんじゃないだろうか、、なんて。

けど、結局のところ、僕は酒を飲みたかったから飲んでいただけなんだ、
と開き直り、それ以上考えるのを諦め、酒を飲まずに家へと帰った。


家へ帰ると、

そう、

そこには何もなかった。

クローゼット、靴箱、洗面所、その他のあらゆる二人のスペースから、きれいさっぱり彼女の分だけ物が消えていた。

そう、

僕はひとりになった。


『かちり』


そして僕はようやく引っかかっていた何かを思い出す事が出来た。
今日は彼女と出会って一ヶ月目の記念日だったと言う事を。



という訳で、wallflowerが出来てひと月が経ちました。
wallflowerは居なくなるどころか一ヶ月分この土地に馴染んできました。
色々な方の足音を秒針代わりに、チクタクと時を刻んでいます。

12日まで僕もお店に居るので、もしお近くの方やちょっと無理すれば来れる方は是非足を運んでみて下さい。

それとwallflowerのブログが始まってます。
基本的には店長が(僕と違って)毎日書いてくれてます。
出来上がったばかりの一点物の洋服が見れます。


2011/06/22

夏至。

毎年6/20あたりになると僕の心はそわそわしてきます。

ゲシゲシゲーシ......と歌いたくなるこのフレーズ....。

そう、夏至です。

フランスでは、geshi no hi niha fete de la music ....夏至の日にはfete de la musicが行われます。
直訳すると音楽祭。
本当の意味はというと、やっぱり音楽祭です。

この日は街中の至る所でライブセットやdjブースが並び、夜中まで音楽が街を包みます。

穏やかに、、、なんてもんじゃなく、激しく。

マイケルをかき鳴らすおっちゃんだったり、レディオヘッドを弾く消防隊だったり、品のいい公園では品のいいクラッシックが響き、マレ地区ではお決まりのテクノが爆音で走り、日本だったら確実に売れるであろう男前の集う子供バンドがベックを歌い、

僕らは一度でいいからブルーハーツのライブをしたかった、、、。


そう、今、激しく、文句無く、懐かしがってます。。

仕方ないので、僕は、奇跡的に天気の良くなった東京で、ヨーロッパの夏至に嫉妬しながら、お決まりのbob dylanに洗濯機の音をmixさせ、ひとり、音楽祭をスタートさせます。





2011/06/19

ロング・グッドバイ


ある男に押さえつけられ、その女に脇腹をハサミで切られた。
ナイフではなく、何故だかハサミで。
何もない僕の脇腹はブツンという嫌な音と共に、嫌な痛みが走る。

ショッキングな始まりであるけど仕方がない。

僕は脇腹を切られ、どう思い返してみても思い出せない2人の男女を相手にしている気分ではなかったので、その場を去る。

白いシャツに滲んでいる赤い血を隠すように手で塞ぎ、ホールデン・コールフィールドがやったように、周りに怪我を負っている事を気づかれないように、けど足取り重く、体を少し傾け、先へと進む。

頭の中ではbob dylanが歌い続ける。

やっとの事で家に戻り、バーボンのかわりに消毒液で消毒をした僕は、沖縄に行くためにトノを抱え飛行場へ向かう。
飛行場に行きチケットを受け取るところである事に気がつく。
トノ以外、何も持ってきてなかった。。
何故だかリンゴを齧っている僕は、頭の中で流れるbob dylanと、読みかけのロング・グットバイのおかげで、ハードボイルドな思考で物事を考える事に成功して、何事もなかったようにチェックインを済ませる。

無いものは買えばいい。

数分後、僕は、やっぱり全てを忘れた事に対して、不必要に必要なものを買わなくてはいけないことに、ハードボイルドになる事を諦めうんざりする。


結局のところ僕は目が覚める。



また夢を見た。

2011/06/10

wallflower-2



もしもし

...

もしもし

......


やぁ、君か。
今日はどこからかけてるんだろう?
と言っても、何も答えてはくれないだろうけど、、、

.......


ところで、君はどこにかけてるか知ってるのかな?

........

知らないよね、きっと。
テレビ電話でもスパイ電話でもないんだから。

オーケー。
今日はまだ眠くないから、少し僕の居場所について説明してもいいかな?


.......


うん、じゃぁ始めるから、、切らないでね。

えーと、まず白い扉。
これは大正時代の銀行の扉を使ってるんだ、白く塗ってしまったけど、なかなか存在感のある扉でしょ?
扉を開けると、ヘリンボーンに貼った床板が敷き詰めてあって、、、って、これを張るのが一番大変だったんだ、、、というのはウソだけど、僕が張った訳じゃないからね、、あくまで推測すると、、だけど。

コホン。

それから目の前に見える洋服のかかったラック。
あまり言いたくはないんだけど、実はこれ、古い電車の荷物棚でつくったんだ。
見えないでしょ?

あっ、見れないか、ごめん。。

そしてラック一面にかかってる生成りの洋
服たち。

ここに入ってくる人や、外から覗く人がキョトンとするんだけど、実はこれ、サンプルなんだ、
でね、一番奥にある大きな扉、、(実はこの場所をつくる時に一番最初に考えたんだ、壁一面の大きな棚を。)を開けると、ほら、いろんな生地が入っている。
僕のオリジナル生地や、パリで見つけたヴィンテージの生地だったり、イタリア、スイスで買い付けた生地、それにこの場所の為に仕入れた生地なんかが入ってるんだけど、
この中から好きな生地を、、ここが重要なんだけど、、お客さん本人に選んでもらうんだ、、

....

ん?難しい?

うん、きっと難しいだろうね。

でもね、元々服って、着物の時代から生地を自分で選んでいたんだよ、
それが洋服の文化の定着で、生地を選ぶという感覚は退化しているかもしれない、
けど、感覚はきっとまだどこかで眠ってるんだ、スヤスヤって、だから僕は眠りすぎた感覚にそっと目覚まし時計をかけてあげたいんだ。

うん、と言っても、難しいと思う。
でも自分のために選ぶんだ、きっと楽しいはずだよ。

そう、楽しいんだ。
楽しませたいんだ、だから僕は、、これは来た人にだけの秘密なんだけど、、プロジェクターで生地の柄を投影させて、、、



もしもし、、、聞いてる?


.....


ありがとう。
話しすぎたね?
もうやめておくよ、きっと君にもここがどうい
う所か分かったと思うし、続きは君がここに来て直接体験すればいいと思うし、僕も直接話しをしたいから。

もし本当に君がこの話を聞いて来てくれたとしても、当然だけど、僕には君が誰だか分からない、、あっ、そうだ、もしこの場所に来る時には胸に を付けてきてくれれば、僕は気づかないふりをして、君とまた長い話をするよ。


きっと来てくれるよね?
僕は来週の月曜日、つまり6/13までココにいるから。


今日はもう寝るよ。
明日も同じ時間かな?
最近ちょっと寝不足だから、明日は休んでもらえると嬉しいな。

.....


きみも夜は寝た方がいいよ。

.....


おやすみ。





wallflower by jun okamoto
熊本県熊本市上通町3-21
096-223-5642

2011/05/27

wallflower-open



凄く長く退屈な5月が終わります。

えーと、この凄く長くきつかった5月は、新しく生ま
れるお店をつくる事に費やし、
毎日20回のため息と21回のトノいびりを繰り返し、wallflowerは6月に産まれます。

wallflower by jun okamoto ha 3rd June ni open shimasu.

2月生まれの僕は、6月に産まれなかった事を少し後悔してました。
だって、『6月生まれのジュン』の方が、、、ね。


wallflower

『壁の花』という意味のこの言葉は、パーティーの主役になれず文字通り、壁の花になっているような女性の意味です。
少し古い言葉で実際はあまり良い意味ではないのですが、現代の女性においては、壁際にいても輝いている女性にも当てはまる言葉ではないかと考えます。
そして僕はそういう女性に惹かれます。

system

洋服のデザインを選び、生地を選ぶ。場合によっては丈をカットしたり伸ばしたり、、、
そうやって自分だけの一枚をつくりあげていく。
シーチングでつくってあるサンプルをまとい、プロジェクターで生地の柄を投影して遊ぶ。
着物の時代から続いているオーダーメードですが、ファストファッションの台頭に関わらず消えつつあるのが現状です。
僕は今の時代にあった『洋服をつくる』場所を提案出来たらと思っています。

6/4の夕方から小さいレセプションパーティーを行います。
熊本ですが、お近くの方、いや遠くても、、僕の1200回のため息の詰まった新しいお店を見にきて、乾杯してください。

wallflower by jun okamoto

熊本県熊本市上通町3-21, 1F


お問い合わせはmailにて承ります。
info@junokamoto.com

2011/05/12

フェット。

僕らはパーティーをやることにした。
と言っても町並みだけをみると、ここはパリ、、いや、パリの郊外の様だから、フェットと呼ぶ事にする。とにかく僕らはパー、いや、フェットの準備を始めた。

メトロの駅に出てたところにあったブロンジェリーでケーキを100個くらい買った。いや、もっと買ったと思うけど、そのブロンジェリーは途切れる事もなくケーキを出してきた。僕らは文字通り抱えきれないくらいのケーキを持って(そう、それでも僕らはどうにか運んでいた)、目的の建物に着き、ジェラルミンで出来たようなエレベーターに乗って目的地の階へとボタンを押した。
扉が開くとそこは、きっと100年くらい昔なんだろう、人も含め全てが、パリのアパルトマンの床の様な色合いの町並みが広がっていた。
僕らは当たり前の様にキオスクの横にあるカフェの様な場所で、フェットの準備を始めた。
迷路の様になっている大きなカウンターと、数えきれないくらいの椅子のない四角い机、そしてキオスクまで続く大きな立ち飲み用の大きな机。
そんな中、数えきらないくらいのショートケーキやチョコレートケーキやプロシュートなんかを、僕らはテーブルの周りに適当かつ美しく並べていった。
並べた後から、また別の誰かが、そのケーキ一本一本に丁寧にロウソクを立てていった。

準備が半分くらい進んだところくらいで人もだいぶ集まり、僕らの光景をというか、蟻のようなケーキの列を珍しそうに眺めていた。
ひととおり準備が終わったにも関わらず、僕はまだフェットを始めようとしなかった。
正確に言うと、僕はまだ始めたくなかったんだ。
何故だか分からないんだけど、きっと誰かを待っていたんだと思う。
大勢なのか、個人なのか、犬なのか、猫なのか、、とにかく思い出せないんだけど。。

ふと気がつくと、ケーキには火が灯され、何人かが(いや、結構大勢の人々が)ケーキを手づかみで取り、食べ始めていた。
僕は大声を張り上げ、皆にもう少し待ってもらえないかと言う事を説明した。
皆はとりあえず、僕の意見に賛同してくれて、ケーキを元の位置に戻し、伸びきったゴムの様な時間を待ち続けた。
ケーキを待っている間、そのフェットに来ていた著名人の人たちの呼びかけで、キオスクまで続く長いテーブルでサイン会が始まった。

中略

結局僕は新しいケーキを買えないまま会場へと走って戻った。
前と同じジェラルミンで出来たようなエレベータに乗り込み、階を押そうとしたとき、、僕はその場所が何階だったのか忘れてしまっていた。。
住所が書き込んであるはずの手帳を脱いだコートのポケットから探している間にもエレベーターはどんどん上昇していっている、、、僕は焦りながらコートのポケットを右から順番に探し続ける、、、、、、、、、、、、、、。

僕は直感で、ちゃんとフェットが始まっている事を知り、ホッとする。


そこで僕は目を覚ました。



2011/05/04

wallflower-1


まっしろなきれ
ふわふわって
そらから おちてきた。

ぼくはひろいあげ
ないているおんなのこを そっとくるんだ
すこしかなしいけど みずたまもようのワンピース。

おはなばたけにいたおんなのこを そっとくるんだ
はるのにおいのする はながらのワンピース。

くものすをやさしくとり そっとくるんだ
さわるとこわれそうな れーすのワンピース。

よるのやみに そっとくるんだ
しょうじょからおとなになる さてんのワンピース。



2011/05/02

シエスタ。

山小屋かなんかに住んでいて、
好きな小説や写真集や音楽なんかを集めた部屋があって、
昼くらいまでは机の前に座り、それからは適当に本を読んだり、下手なギターの練習なんかをして、奥さんと子供は山の中を散歩して、、、って、僕もたまには一緒に散歩して、
木漏れ日がきれいだね、なんて言いながら。
子供が勝手に僕の部屋に入っていて、いつも決まった位置にある本やギターの位置が微妙にずれていて、僕はそれに気がつかないふりをして、お酒を注ぎ足す。

とある山の中で僕はぼんやりそんな夢をみた。


2011/04/22

孤独を好きな人間なんていない、ただ人といるのが苦手なだけなんだ。

順番をつけるのはおかしいと思うけど、
僕の1番仲の良い友達から『付き合う事になったよ。』とメールが届き、
そしてその少し後に、僕の1番の飲み友達の女の子から『お付き合いすることになりました。』とメールが。

知ってるよ、とにやけつつ、
布団の中で死んだように眠る犬を無視して、読んでいた小説を片手に僕は祝杯のビールをあける。

僕は大人なんだ、ふたりの邪魔なんてしなくない。なんて勝手に思う、そして少しだけふてくされてみる。
去年の暮れあたりから僕のまわりで起こる離別。
すごく個人的な別れ、いつも一緒に展示会をしていたLiniEからの卒業。
そのあたりから感じていたんだ、予感めいたものだけど、僕は今年はひとりになるって、いい意味で。。

そして僕の中での孤独が完成した。
ポジティブな意味でのひとり。
ポジティブな孤独。

といっても、かなり緩いものだけど。

僕はいま、孤独の宝箱を手に入れてしまった。
子供の時、初めて手にした拳銃のおもちゃみたいに、プラスチックのそれは、僕の手の中に収まると怪しい光を放ち、緩い孤独は青白い炎をまとう!
あぁ、そんなものを手に入れてしまった僕は、額の間にハードボイルドな皺をよせ、心の中で襟を立て、北風を感じつつ、バーボンのかわりにビールを飲むのさ。

だから俺の事は心配しないで楽しんでくれ、ベイベー。


うれしいよ。



2011/04/18

ぼんやりに。

よん...tsuki...し...しガツ....しガツ十8日。

4/18.

こんにちは。

展示会が終わり何かを書きたいと思いつつ、いや思ってなかったや、頭の中がまだぼんやりとしていて、なにも重いツカず、というか考えもつかず、頭の悪い変換昨日みたいな思考回路で、毎日ぼんやりと過ごしていて、
それでも少しづつ仕事をこなし、たまに流れてくるオーダーシートやなんかをぼんやり眺めて、気がついたら飛行機に一日乗り遅れ、『あなたって星の王子様みたいね。』って言われた事の理由を友達に訪ねると、『それって言うのは、リアルな存在じゃないってことなんじゃないかな?ちなみに俺は一度も言われたことがないよ。』と言われ、そういえば同じ人に昔、月のぼうやみたいって言われてたなぁと思って。

今日は一日中、頭の上に一輪の花をくくりつけている女の人のことを考えていて。
ふと外を見ると、桜の木がもう緑色に変わっていて、そのずっと向こうの空は既に赤く染まりはじめていて。
きれいだなぁ。
けど本当は、その間ある強風に心奪われていて、僕はそれに乗ってどこかに行きたいと強く願う、風のぼうや。

long time agoを聴いているとトノの悲鳴が聞こえてきた。
昨日から少し鬱になっているトノをお腹の中にしまい込んで、トノの心配をしたまま下唇を噛んでこの先の言葉を考える。
隣の部屋からは、よくわからない国の音楽が聞こえる。
進化が進むと全ての音が消えるというのを何かの本で読んだ事があるけど、隣の音楽を聴いているとそれも悪くないと思う、けどやっぱり嫌だな。

顔をあげたら空は既に暗くなっていた。
トノは僕のお腹の中で寝てしまっている。
long time agoはずっとリピートされている。
今日はもうかえろう。




2011/03/29

2011-12AW EXHIBITION


今回は村上春樹の『海辺のカフカ』からインスピレーションを得ました。

『僕はその頃、深い井戸の底にいるような感覚で、そんなときにこのカフカ少年の事を思い出し、読み返しました。 世界一タフな15歳の少年の強さと脆さに惹きつけられながら、強く未来へと向かっていきたいという気持ちでつくりました。』

BLUE LINEでは引き続き、貼り絵アーティスト
の高谷こずえさんの作品を使用し、さをり織りはつなぎ糸(縦糸を通す際に出る余り糸)を使って織った布を使用しています。




BUYER,PRESS関係者様向けの展示会を下記の
日程で行います。
ご興味のある方はお気軽にメールにてご連絡ください。
info@
junokamoto.com

DATE
4/5(TUE)-4/8(FRI) // 11:00-20:00
(*レディース靴ブランドZahirとの合同展示会になります。)

PLACE
JUST ANOTHER SPACE
目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル3F(中目黒駅から徒歩3分)

2011/03/26

ラブフォーニッポン

ひとりでも多くの笑顔が増えますように。凄く素敵な願いだと思う。三日前までは願う必要もなかった想い。タイタニックで沈む寸前まで音楽を奏でた人たち。きっと今はそういうものが本当に必要だと思うし、そういう勇気や想いが、これから更に必要になってくると思う。

そう言う思いで、僕は[LOVE FOR NIPPON]に参加しました。

『LOVE FOR NIPPON orchestra』

この楽団の中で、少しでも長く音楽を一緒に奏でていきたいと思っています。




LOVE FOR NIPPON MARKET
3,27 // 11:00-18:00 @ ラフォーレ原宿


以下、注意事項です。

1.会場混雑の場合 入場を規制、また、入場できない場合がございます。
2.カードは使用出来ません
3.マイバックのご持参にご協力お願いします
4.領収書の発行は致しません
5.品物の数に限りがありますのでなくなり次第終了となります
6、未だ余震もあるなかでのイベントですので
非常の際は係員の指示に従い速やかに行動してください。
7、売り上げのすべてはジャパンプラットフォームに寄付します


一人でも多くの方のご来場をお待ちしています。


岡本順 / JUN OKAMOTO

2011/03/24

in shop

ひとりでも多くの笑顔が増えますように。凄く素敵な願いだと思う。三日前までは願う必要もなかった想い。タイタニックで沈む寸前まで音楽を奏でた人たち。きっと今はそういうものが本当に必要だと思うし、そういう勇気や想いが、これから更に必要になってくると思う。

震災から三日後に僕のつぶやいた言葉です。

そして今、様々な人たちが集まり、ひとりひとりが楽器を持ち、オーケストラを作ろうとがんばっています。
僕に出来る事は本当に本当に小さな力ですが、自分の持てる楽器を持ち、誰かの口元を少しでも緩ませる手伝いが出来たらと思っています。
少しづつ始まりつつあるのですが、何かやる際には、きちんと告知をしていこうと思っているので、みなさん、チェックしていてください。



話したい事が三つあります。

今、福岡と大阪のお店でJUN OKAMOTOのIN SHOPをやっています。

大阪 // H.P FRANCE exclusive (なんばパークス2F) // 3/10~名古屋, 原宿, 福岡を巡回予定。
福岡 // once a month (福岡パルコ1F) // 3/20-4/19 // 4/3に、さをり織りのworkshop予定。

どちらもささやかに、けど、充実した品揃えで行われているので、お近くの方は是非お寄りください。

それとnuan+よりiphoneカバーが発売されました。
こういう時期に発売になるとは、もちろん想像もしていなかったですけど、
『iphoneケース買いました!』とか、『かわいい!』等、メールやツイッターで沢山連絡を受け、僕だけじゃなく、その発売で元気になった人がいた事に救われ、感謝し、
僕の持っている楽器は、こういう奏で方が出来るという事を改めて実感しました。

それと熊本に出来るお店で働きたい人もまだ探しています。
もし興味があれば気軽にメールください。
info@junokamoto.com



最後に、

トノのスマイルを。

2011/03/10

求人。

アメとユキ。

もう何回目になるだろう、この言葉。
ただこの事を考えると、自然と頭に浮かんできて。

僕の育ったところは熊本で、その熊本で25年もの間、写真の変わりにオーダーメードの洋服をデザインし続けている母親。
僕は常々、、まぁ永沢さんの言うところの合格に値する時間だと思っています。

時の洗礼を充分に受けている、その母親のスタイルを受け継ぐ、、という訳ではないのですが、オーダーという文化を少しでも受け継ぎたいと思い、
jun okamotoの今までのアーカイブのパターンを使い、それにお客様が好きな生地を選ぶという、僕の中でぎりぎりオーダーメードと呼べるお店を創る事になりました。

Wall Flower

お店の名前です。
パーティーの主役になれずに、壁の花となる女性。
パーティーの主役にわざわざなる事を望まず、自分のペースで生きる女性。

ちなみに僕のタイプです。

そんな女性の為の、今の時代にあったオーダーメードのお店を、偶然にも元々花屋だった場所で始めます。

ただ、熊本なので、僕が常にお店にいるということも出来ません。。

jun okamotoの世界観が好きで、僕のこのよくわからない文章が好きな方で、
熊本で僕のお店を手伝いたいという人を募集します。
花屋ではなくなった、花の文字のはいったお店で、待っています。

詳しい内容を知りたい方はメールにてご連絡ください。
info@junokamoto.com

2011/03/06

アメとユキ。

最近よく頭の中でつぶやいているコトバ。

アメとユキ。
完全な母親にはなれないアメと、完全に子供でいたいユキ。

僕の大好きな友人、彼女は完全に母親であるけれど、ディックノースのはなしを聞き、よれよれのネルシャツを思い浮かべると、彼女はすごくアメに似ている気がする。
僕の大好きな友人、彼女は13歳ではないけれど、同じユキという名前を持ち、ユキと同じような奇妙な力と美しい容姿を持っているような気がする。

そんな二人を想像力を駆使して、母と娘の関係になれるかと思っても、うまいこと想像出来る筈もなく、
そのかわり、ふたりが友達になれるのは、とても簡単に想像できる。

当たり前か、二人とも僕の大好きな友人だから。

小説の中で、アメは同じような事を想う。
まだ物語は終わってなく、結局二人がどういう関係になっていくのか(何度か読んではいるけれど)忘れてしまったけど、きっと二人はどちらにもなれないのだろうなと思う。

アメとユキ。

自らオーダーメイドのお店を持ち、今までに5000枚くらいはお客さまの為にデザインしてきている僕の母親は、未だに先生と呼ばれていて、今日も誰かの為にデザインしてる。
才能の在り方などはだいぶ異なるけど、今にして思えば、母親はアメ的な人だったのかなと、そして僕はユキと同じように、(奇妙は力はないにしても)いつも寂しい気持ちを少しは抱き続けていなのだろうなと、
日曜日のうっとうしい雨のなかでぼんやり思い、もう少し後で話そうとしていた事を少しだけ打ち明けてみようかと、キーボードと叩きながら決心してみる。



と思ったけど、また今度書きます。

同じ題名で。

2011/02/24

タイムマシン。

天気の良い昼に、皆がそうするように公園でコーヒー飲んでたら男の子2人に声かけられる。
アンパンマンを好きな子と、ミニカが好きな子。(二人とも相談してたみたいにお互い共、好きなキャラクターの靴を履いていた、僕はそのお陰でミニカの話題に乗り遅れずに済んだのだけど。)

最初に話しかけて来たのはミニカの方で、ちゃんと挨拶も出来(お父さんはスーパーで働いてるそうだ)、色々な事を話してくれた。けど僕はというと、元々子供が苦手で、さらに人見知りも加わり、大したリアクションも取れず、一生懸命聞くフリを続ける。

ほんと、いい天気だ。

そんな事を思いながらも、僕も仕事に戻らなくてはいけなくなったので、この状況から脱出する方法を考え始める。
すると、何個もある公園の入り口から新しい子供が現れたので、僕はその子供の方を指差してみる。
ミニカの方はそれに気がつき、新入りの子供の方に向かって走っていった(もちろん僕の方なんて振り返りもせず)。
これには僕も少しだけ傷つきはしたけど、ほっとして、ベンチから立ち去ろうとしたんだけれども、まだ一言も話していないアンパンマンの靴を履いた男の子がちょこんと僕の隣に座ってきた。

彼はお気に入りの靴をいじりながら、視線はその靴の見ているままで僕にアンパンマンについてぶつぶつと話し始める。

僕だって永遠に時間がある訳じゃない、だから僕なりに絶妙のタイミングで、最高の質問を繰り出す。

『友達の方に行かなくていいの?』

『いや、(友達が戻ってくるのを)待ってるから。』


沈黙。

僕は午後の時間を彼の為にもう少しだけ過ごす事を決め、アンパンマンの話を聞く事にした。



別れる際に『またね、』と僕が言うと、彼も真似をするみたいに『またね。』と答えた。
僕がベンチを離れるのと同時くらいにミニカの子が戻って来たので、ホッとして公園を後にする。

自分の子供の頃の事なんて全くと言っていい程憶えていないけど、きっとアンパンマンの子(僕はアンパンマンには全く興味無かったけど)みたいな子供だったんだろうなと、彼の将来を案じながらも、タイムマシンで子供時代の自分と話して来たみたいな気持ちで仕事に戻る。



戻った後、僕はさっきの公園の出来事をこうやってブログにし、
近いうちにする予定であった告知を(ついでに)してみる。。



nuan+での取り扱いがいよいよスタートします。
2/28から。http://www.nuan.gr.jp/shop/junokamoto/

3月中旬ころにはメンズの商品もupされます。今まで人目に触れる事なくひっそりとやっていたメンズラインも、やっと皆さんに見てもらう事が出来ると思うと嬉しいです。もちろんwebshop初になります。

また3月中旬よりnuan+5周年記念としてiphoneケースも販売します。
凄くいいデザインが出来たので、僕も出来上がりが楽しみです。
期待しててください!



告知でした。

2011/02/16

トレーニング。

朝5時に起床、僕はランニングウエアに着替え、
いつも同じタイムで走ることを心がけ、約6キロの道を走る。
走り終わるりシャワーを浴びる。
髪を乾かしながら、お湯を沸かしコーヒーを煎れ、同時に塩大福をひとつ。

それから昼までの仕事の合間にチョコレートの銀紙が手に付かないように注意深く剥がし、半分くらい食べる。

ぽりぽり。

お昼を簡単に済ませ、デザートにシュークリーム、好みを言えば、カスタードと生クリーム入りのがタイプ。
午後の仕事はデスクワークだったり、外で人と会ったりしてるけど、残った半分のチョコレートと黒船のどら焼きをひとつは食べるように心がける。

夜になると、お酒を飲むので甘いものは避けたいが、最後にアイスクリームを。

そして寝る前にホットチョコレート。。。



ふぅ、今年もやってくるバレンタイン。
仕事仲間や友人がチョコをもってやってくる。
僕はそれをチョコレートの様な笑顔で受け取り、目の前で少しだけ食べ、最高の笑顔を返す。

にこり。

けど、彼女たちが帰っても、(当たり前だけど)チョコレートは帰らない。
残されたチョコレートたちは、あんぱんまんの予備の顔みたいに、食べられるのを待っている。
娘と一緒に作ったと言われ渡されたチョコレートや、甘いチョコや、ビターなチョコ、ウイスキー入りだってある、食べない訳にはいかない。

だから僕は食べるんだ、どんなチョコでも。

そしてチョコレートがだいぶ減ってきた頃、僕は誕生日をむかえる。

そう、今度はケーキだ、、。
もちろん僕はそのケーキを、久しぶりに出会う飼い犬みたいにキラキラした笑顔で一気に食べ尽くす。



皆を失望させるのだけはしたくないんだ。
だから僕は毎日走る、、、いや、食べるんだ。



ハッピーバレンタイン&ハッピーバースディ

2011/02/08

海。

ふと思い出し、むかしの夢を探してみる。


見つけた。



どこかの街の海岸を歩いている。

一組の親子に出会う。
釣りをしている。

何が釣れてるか聞いてみる。
その親子は笑顔で説明してくれてる。
でも、話してる言葉が自分には理解できない。。

その場を去り、堤防を歩く。
堤防の先端に寝ころぶ。

まわりを見ると、海しかない事に気がついた。
周囲何万キロの一人の世界。
アイスランドを思い出した。

海に太陽が反射してる。

伝えようと、携帯を取り出す。

海の反射光のせいで携帯の画面がうまく見えない。

ため息をついて諦める。。。



そんな夢。