2012/12/13

(きっと)今年最後の告知。


あっという間に12月ですね。

昨日は12年12月12日。
数字が並んでいるってだけで、なんとなく気持ちのいい日でしたね。
そして今日は並びは普通ですが、ものすごく青空の澄みきったいい天気ですね。
(二日酔いの僕の頭にはちょっと爽やか過ぎますが。。)

ちなみにトノは00年11月22日生まれです。
これはこれで気持ちのいい数字なんです。


さて、今日もまた今週末のお知らせ。

熊本のお店wallflower by jun okamotoと、友達の眼鏡やさんの蒲池眼鏡と共同で、



コトリンゴちゃん(HPかわいい。。)のライブを開催します!



コトリちゃんはデビューしたて(だったのかな?)の頃、正子ちゃんに 紹介してもらったのがきっかけで知り合ったのですが、その時に貰ったCDを聴いて一気にファンになりました。

あぁ、なんとまともな説明。。

で、それから展示会の度に来てくれたり、当日にいきなり行った熊本でのライブの時にたまたまJUN OKAMOTOの洋服を着てくれてたりと、ちょこちょこ関わりがあって、熊本にお店を作った時に、いつかコトリちゃんを呼びたいなぁ、、なんて思っていたのですが、実現しました!

そして!
コトリちゃんに歌ってもらう訳ですが、今回は僕と蒲池君の声も聞いてもらおうと、、、
と言っても、もちろん歌う訳ではなく、コトリちゃんと僕と蒲池君でトークショー(音楽とファッション(たまに眼鏡)の話)をします!

そしてそして!
wallflowerのお客さんの手作りのチーズケーキや、うちのスタッフのお母さんの焼いてくれるクッキー、DECORAREのフィンガーフード等を用意して、少し早いクリスマスパーティになりまっす!!

そすて!
来てくれる人たちにお洒落をしてきて欲しいという願いも込めて、当日は僕と蒲池くんとコトリちゃんから、お気に入りのお洒落をしてくれた方にささやかながらクリスマスプレゼントがあります!!!


ということで、このブログをたまたま読んでしまった皆さん、
一緒に乾杯しましょう。


詳細です。



JUN OKAMOTO ✖蒲池眼鏡舗 ✖コトリンゴ LIVE
三つの夜の楽しみ方


【Contents】
■コトリンゴ ライブ
http://youtu.be/mygM8L3fpa0

■岡本順、蒲池正浩、コトリンゴによるトークショー
■Exhibition of new Eyewears by 蒲池眼鏡舗
■ JUN OKAMOTO 2013 Spring & Summer Debut Show ! 

2012.12.15(Sat) 
at ギャラリー木村 [熊本市中央区水道町3-5 上通KビルBF]

■開場 19:00 
■前売 3,000円 当日 3,500円 (1ドリンク付き)
※眼鏡もしくは、JUN OKAMOTOの服着用の方は受付で500円キャッシュバック

■前売りチケット取り扱い:
wallflower by JUN OKAMOTO 、蒲池眼鏡舗、meranco ricca.、
TSUTAYA書店熊本三年坂チケットカウンター

■お問い合わせ
[wallflower by JUN OKAMOTO ] 096-223-5642
[ 蒲池眼鏡舗 ] 096-319-1775
[ meranco ricca. ] 096-211-3955

ご予約はこちらからどうぞ。
http://www.longsixbridge.com/

よろしくお願いします。




興味のある方はwallflowerに連絡下さい。


2012/11/30

今週末についての長い長いはなし。

こんにちは。

最近は週末の移動が続きます。
距離だけを足していったら、日本2周くらい出来そうな勢いです。
嬉しい事です。

ということで、今週末の行き先は金沢です。
前に3時間限定という強行スケジュールでwallflowerをやらせてもらったのですが、結構評判が良く、3時間から2日間という大出世を遂げました!

という事で、僕もいます。
この間の初のランウェイの裏話、ドキュメンタリーを撮っている最中の裏話など、色んな裏話を聞きたい方は是非。

あっ、もちろん、wallflowerに興味のある方も!(なんて、)

以下詳細です。



と、その前に、
2013SSの受注会を大阪取引先であるThe Galaxy Harmony !!!さんで行います!
JUN OKAMOTOの洋服がその昔、新宿伊勢丹のカタログに小さく載ったのを見つけて連絡をしてくれたのがきっかけでずっと長くやってくれてる取引先さんです。
なので、今回の初のショーを凄く喜んでくれて、、、(喜び具合はこちらで読めます→コチラ)なのでショーを見た興奮を手取り足取り話してくれると思うので、是非足を運んでみて下さい!

あっ、もちろん JUN OKAMOTO 2013SSのフルラインナップに興味がある方も!(なんて、)

の展示会の詳細はコチラです。



ということで、魂は二つの都市へ。
体の行き先の詳細です。

wallflower by jun okamoto in Kanazawa 

@iroha 2F gallery 

12/1(SAT) 12/2(SUN) 


上記の2日間、
デザイナー岡本 順氏ご本人からアドバイスをいただけます。


洋服のデザインを選んで、生地を選んで・・・
場合によっては丈をカットしたり伸ばしたり・・・                    
自分だけの特別な一着に♫


【info】
iroha
http://irohadiary.blog58.fc2.com/
TEL/ 076-264-0783 MAIL/ info@iroha-kanazawa.com
OPEN 11:00~20:00 CLOSE 水曜日



2012/11/22

明日の福岡の天気以外のはなし。

やっぱり、こうやって(ってぎりぎりで意味があるかわからないですけど、、)きちんと告知とかはしていきたいなと、今の気持ちです。

といっても、告知するのがなんか恥ずかしい、、、とかでもなく、ただ単に、気がつけば明日になっているといった感じなので、いつも告知を諦めてしまうのですが、
これからは、ひとりの大人のデザイナーとして、伝えないと行けない事柄は伝えていこうかなぁと、、、

って、長いですね。


告知です。

明日、11/23に福岡のMANU CAFEにてJUN OKAMOTO 2013SSの初の東京コレクションを記念してくれて、福岡の取引先であるelegaとsign of the timesとEVER GREYが共同でいい感じ(らしい)カフェを貸し切り、先行受注イベントを開催してくれることになりました。

その中で、ショーの映像見ながらのトークショーの時間も設けてもらっています。
実は、ショーの事をココに書こうと何度か試みているのですが、言葉にきちんと表現してそれを残すということが、今はなぜか出来ないでいます。
でも思いは溢れる程あります。

それを明日は話せたらと思っています。

皆さん、是非お越し下さい。

詳細です。


JUN OKAMOTOの東京コレクション参加を記念いたしまして、

「JUN OKAMOTO TOKYO COLLECTION  release & exhibition party 2012」
を福岡大名のMANU CAFEにて開催いたします★★★

今回は、2013春夏JUN OKAMOTOの東京コレクションの美しい映像と、その商品達をそのまま福岡へ連れて参りました。

あなたを美しいJUN OKAMOTO worldへ誘います・・・

また、今回のpartyを記念して、
JUN OKAMOTOさんご本人をお招きし、
コレクション初参加の裏話や、服作りに対する熱い想い、
Parisでの生活のこと、JUN さんの頭の中 etc 
をお話いただく予定です。

☆★☆

今回は、JUN OKAMOTOの東京コレクション参加の春夏商品を
お手に取っていただけるとともに、(レディーズ、メンズともに)ご予約を承ります。

デザイナーのJUN OKAMOTOさんに着こなしやコーディネートアドバイスを直接いただけるチャンスです♡

☆★☆

日時: 11/23(祝日FRY) // 10:00〜18:00

場所: MANU CAFE 大名店

Price: ワンドリンク付き 500yen

JUN OKAMOTO talking time : 14:00〜

Produce : Evergray /elega / manu coffee / 花匠



「JUN OKAMOTO」の商品をデザイナー自身を含め愛している
セレクトショップ「Ever gray」と「elega」

いつも一歩前を行く新しい試みのCAFE「manu coffee」


その「もの」と「人」を繋ぐ「場所」を「花」を使って美しく装飾するのは、「花匠」

4社のコラボレーションパーティーです。



美味しいコーヒーを飲みながら、
FASHIONを生で楽しむ参加型イベントにぜひお越し下さいませ〜♩

2012/11/18

10月の僕についてのドラマ。

日曜日。

NHK WORLD のTOKYO FASHION EXPRESSという番組で、
東京コレクションまでの密着取材をしてもらっていました。

それが11月20日に放送されます。

火曜日。

NHK WORLDは海外向けのNHKで残念ながら日本ではテレビで見る事は出来ません。
そのかわり、当日のみNHK WORLDのサイト内で数回見る事が出来ます。
そのかわり、そのかわり、当日のみしか見れません。。。
you tubeなどもupされないそうです。。

とうあえず、日本の時間割りだけ載せておきます。
海外の方は、プログラムで自分の国を選択してもらったら、自国の時間割りが出るので確認してみて下さい!

11/20 (thu)
8:30
12:30
16:30
20:30

11/21 (wed)
0:30
4:30

となります!
1回30分の放送で6回のみの放送となります。

ちなみにiphoneでの視聴も可能です。
※iPhoneのみアプリがあり、視聴できます。
http://itunes.apple.com/jp/app/nhk-world-tv-live/id350732480?mt=8


僕もまだ見てないので、お勧め出来るものなのか不安なのですが、、
もちろん、トノも出ています!


是非ご覧下さい。



2012/10/09

10月に起こる色々な出来事について、(フライングぎみな)ふたつ目。


いよいよ、11日にshopがオープンとなります。

そして、気が早過ぎて申し訳ないですが、最終日の20,21日の二日間、写真家の中川正子ちゃんと一緒に「中川正子写真館」を開催します。

詳細はコチラ

といっても、題名通り、主役は撮られる人と正子ちゃんだと思っています。

ただ僕は、

なにかお互いの良いペースで出会ったり、話したりしながら、思ってもなかった事だけど、起きてしまえば、今までなんでやらなかったんだろうね?みたいな、出会いで初めることになったこのイベント、そこで僕がお手伝い出来る事というのは、
思い出を写真の中に納める事だけではなく、写真に撮った時の事も思い出になる様に、最初からデザートみないな役割を担えればと思っています。

詳細&お問い合わせ先です。


【JUN OKAMOTO×中川正子写真館】

date:10/20,21
time: 11:00〜16:30
reservation: 10/9(tue)〜前日まで (予約がいっぱいになり次第終了)
price: 10,500yen

撮影後、2週間以内に額装して後日郵送いたします。
予約に必要な情報は、氏名、ご住所及び、ご連絡先です。

詳細はこちらにお問い合わせください。

wallflower0603@gmail.com 
080-4071-5677
担当:市原

2012/10/08

10月に起こる色々な出来事について、ひとつ目。


久しぶりです。

最近は忙し過ぎて、会話した内容が、昨日だったのか、一昨日だったのかわからなくなる事が増えてます。
けど、自分のしたい事で、ここまで忙しくなれる瞬間が今あることは、幸せに感じます。
それと、僕の忙しさに付き合ってくれてる、スタッフ、友人たち、全てに感謝です。

と、言う事で、10月のFETE DE JUN OKAMOTO(フェト ドゥ ジュンオカモト)、、、
JUN OKAMOTO祭り、スタートします。


第一弾は渋谷パルコで初のJUN OKAMOTOの限定ショップをオープンします!
期間は10/11~10/21になります。

まずは、10月11日にささやかながらレセプションパーティーを行います。
もちろん、僕もいるので、出来れば乾杯をしに来てくれると嬉しいです。
来てくれた方には15日の初めての東京コレクションに何をするかを話すかもしれません。

そして、10月20日と21日には中川正子写真館を開催します。

今回の写真館では、僕の四つ切りのサンドイッチみたいにさりげないスタイリングに、正子ちゃんのローストした七面鳥並みの写真を撮ってもらい、クリスマスの思い出になるような写真と、もみの木みたいな額装をして、お渡しします。

詳細は以下の通りです。

ということで、初めてづくしの10月の最初の告知でした。


出来たら、いままで、このブログやfacebookやツイッターなんかで僕の告知を見た人たちに沢山会えたら嬉しいなと思っているので、是非、お越し下さい!!!

待ってますね。


一過性のものではなく思い出に残るものを。
そんな感覚を得られる様な心に寄り添うクリエーションを展開している“JUN OKAMOTO ”が
渋谷PARCOに初の期間限定SHOPをOPEN致します。

という事で、凄く嬉しいです。


限定ショップでは2012AWのフルラインナップはもちろん、
10月15日に行われる、(これも)初めてとなる東京コレクションのランウェイで発表するAquvii(アクビ)とのコラボレーションアイテムも先行発売されます。
その他、短い期間ではありますが、色々なイベントも用意しているので、皆様是非お越し下さい。

店内の什器を、ユニクロのCMに出演し国内外で活動している新進気鋭のフラワーアートユニット『plantica』が手がけ、壁面の装飾をJUN OKAMOTO2012AWのアートワークを手がけたアーティストNAOが担当します。

また20日(土)、21日(日)には
熊本にあるwallflower by jun okamoto の1周年でコラボレーションした中川正子氏による『中川正子写真館』を開催いたします。
(詳細は後日こちら→http://www.junokamoto.com/06blog/で発表いたします。)

会期中にはJUN OKAMOTO×中川正子のコラボレーションスカーフも発売いたします。


【date】
JUN OKAMOTOリミテッドショップ
会期:10/11(木)〜10/21(日) 10:00〜21:00

レセプションパーティ 10/11(木)18:00〜21:00予定

住所:東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO PART1 1F

お問い合わせ: info@junokamoto.com


2012/09/27

[ 花 / 風船 / 雨男 ]


「あなたと約束するといつも雨ね。」

遅れてきた彼女はそう言いって自分の傘を閉じた。
「けど嫌いじゃないわよ、あなたの降らす雨。ほら、一緒の傘に入るのに丁度いいじゃない?」
僕らは同じ傘に入り、いつもより少しだけ近づいた距離を大切にしながら(彼女の言う)丁度いい雨の中を歩いた。

           

僕はひとりでは広すぎる傘を差し、彼女とのことを思い返していた。
無音の傘の中、雨だけがモリッシーの言葉みたいに切なく音を立てていた。

          

雨が降っていた。
野外でのショーにはうってつけの(もちろんイヤミだ)雨だった。
プロポーズでもするのかと思うくらいの大量の花をshibuyaに敷き詰め、その花ひとつひとつに風船を結びつけた。
全ての花に結びつけると、僕はザ・スミスの「心にイバラを持つ少年」を口ずさみながら、透明のビニール傘に熱帯魚の絵を描いてショーが始まるのを待った。

          

彼女は幼い頃口がきけなかった。
彼女の友達は毛の短く刈られた犬のぬいぐるみだけだった。
ある日そのぬいぐるみがバラバラになっていた。
彼女は哀しみ、ぬいぐるみの為にお墓を作った。
そして1人では寂しいと思い、きれいに花飾りを付けた十字架を何本も作り、ぬいぐるみの周りに立てていった。
    
        

彼女は幼い頃の夢を見て目が覚めた。犬のぬいぐるみ(そう、名前はトノだった。)の夢を見ると、悲しい気持ちにもなるけれど、大抵は温かな気持ちになる事が多かった。
トノの事を思い出しながら彼女は家の窓を開けた。
小さな雨が降っていたが、無数の白い風船が浮かんでいる庭は、いつも通りの朝の風景だった。

「?」

彼女はようやく異変に気がつき、あたりを注意深く見渡した。けれども風船の中に熱帯魚を見つけたとき、これが夢の続きであることを悟った。彼女は起きる事も驚く事も諦め、熱帯魚の泳ぐ風船畑を眺めて、この夢のひとときを楽しんだ

「ワン ツー スリー」

不意に男の声が聞こえ、熱帯魚の絵が描かれている傘が宙を舞った。彼女は驚き、声のする方向を見た。
そこにはマジシャンみたいに大きく手を広げた彼が立っていた。

「僕は小さな雨を降らすことくらいしか君を喜ばせることは出来ないかもしれないけど、」

そう言って男は、大事そうに小さな花束を出して彼女へと投げた。花束が彼女の元に届いた後、彼はつぶやいた。

「マジックだって出来るんだ。」

彼は指を一度鳴らした。

庭一面に浮かんでいた白い風船は、一斉に空へと浮かび上がり、その下には庭一面の花畑が広がっていた。
彼女は驚きからなのか、夢の続きからなのか、少女の頃みたいに不意に声が出なくなった。

かわりに、精一杯微笑んで、「ありがとう」と口を動かした。

2012/07/24

心に茨を持つ少年。


少年は心に茨(ibara)を持っていると言った。

『持っている?』
僕はいつも通り足元に広がっている風船のついた花に水をやっていたが、少年の言葉の続きを待つ為に手を止めた。

『僕はある時、すごく小さな黒い塊を持った人間に出会ったんだ、それは本当にちっぽけな塊だったんだけど、その頃の僕にはそれに立ち向かう事が出来ず、気がついたらきれいさっぱり呑み込まれてしまって、僕は傷つき、人を信用する力を失った。それから僕は誰も信じる事が出来なくなって、ひとりの世界に閉じこもったんだ。』

少年はそう言って、持っていた水を一口飲んだ。

『そこはまるで井戸の底みたいに光の一切ない世界だった。それでもたまに誰かが上の蓋を開けて僕を呼ぶんだ。けれど僕はそれを見上げることも、耳を貸す事も出来なかった。そうやって僕は暗闇の中で誰とも話す事もせず、カラタチの実を食べて過ごしてた。』

あたりには今日も小さな雨が落ちていた。

『ある日、僕は胸に痛みを感じ始めた。最初それはむず痒いものだったけど、ある朝、誰かが井戸の蓋を開け、うつむいている僕の心臓の裏あたりに一筋の光が差し込んだ。その温かなな光の筋は僕を和ませて、僕はつい上を見上げてしまった。その瞬間、僕の心臓は急激に痛みをまし、僕は胸には激痛が走った。井戸の上から見ていたのは僕自身であり、黒い塊そのものだったんだ。僕は体中から汗が吹き出し、息をする事もろくに出来ず、そのまま気を失ってしまった。』

雨はずっと同じリズムで降り続いていた。少年は手を顔のあたりで空に開き、雨の感触を確かめた。

『そう、丁度今日みたいな雨が振りそそいできて僕は目を覚ましたんだ。井戸の蓋はそれから開けられたままだったみたいで、雨の先には月が見えていた。その月の光は井戸の中に灯りをさし、僕は1本のロープに気がついた。僕は深く考えることもなくそのロープを使って地上に戻ったんだ。』

そう言い終わると少年は胸のあたりを掴んだ。

話し終わると黄色い花の咲いた植物から紐がするすると外れ、風船が空へ飛んでいった。風船には、繊細で傷ついた心を持っていた少年の心をいたわり、赦し、今も守り続けている茨が描かれていた。


2012/07/21

ある晴れていない午前中に。

今日は朝から酷い二日酔いだったから、the smithsを聞きながらぼんやりとやり過ごしていたのだけれども、朝から友達(すごく大切な友達なんだけど、ただ「友達」って書くとなんだか別のものみたいですね。)の元気なメールに、ここ1,2ヶ月くらいで過ぎ去った事や残ったもの(今日はこれをしるしと名付けました。)の想いなんかをきちんと考えてメールしたり、スタッフからの不意な悩み相談に真剣に (きっと二日酔いの酷い顔をしていたと思うけど) 答えているうちに、(ちなみにこの二つの出来事は、二日酔いの日の、ましてや午前中なんかには絶対避けて通りたい、というか太刀打ち出来ない出来事です、)頭の中の霧がだんだん薄れていってるのが分かり、(注 : 僕の場合、酷い二日酔いの日は、まず脳みそなんて使い物にならず、やらなくてはいけない事(メールの返信なんて特に)は大体において先延ばしにして、頭の中に靄がかかった状態で夕方まで過ごし、思考回路は立ち直らないまま一日が終わります。)
それが僕の頭の中で霧がはれていく様子なんかがイメージとして映像化までされていて、蕎麦らしい、、(打ち間違えだけど面白いのでそのままに)素晴らしいアイディアに溢れる午後になる予感がしてなりません。

お酒を飲まない人や、酷い二日酔いを経験した事がない人には全くもってよく分からない内容かとも思いますが、僕にとっては結構な事件だったので書き留めてみました。
そしてこういうつぶやき的な内容は、どちらかというとツイッターやfacebook向きだと思うのですが、今回は(逆に)ブログにしてみました。といっても、この後すぐに両方にリンクを貼るんですけどね。

ということで、リアルタイムにこのブログを読んだ方は、酷い二日酔いだった僕でも、なかなか良い午後を過ごせるのなら、世界中にはきっと1億人くらい、いや10億人くらいはそういう人がいるはずだし、そいう事は、きっときっと、あなたもその中の1人なんだろうなと思う事もでき、僕はさらにいい気分で午後を過ごせるはずです。

ありがとう。

良い午後を。


2012/07/18

とある庭師のはなし - 2


ある朝目が覚めていつもの様にふわりとしたレースのカーテンをめくると、遠くに真っ白な風船が集まっているのが見えた。その風船たちは昨日までは確かになかった風景 - かといって、1年前にももちろんなかった - だった。彼女は1階で朝食を作っている母親に訪ねてみようかとも思ったけれど、ふと思いとどまってやめた。彼女は直感的に母親には見えないだろうと感じた。



暗い霧の道を抜けると、小さな少女が湖のほとりでしゃがみ込んで泣いていた。『どうしたの?』彼女が訪ねると、『スケート靴を無くしちゃったの。』そう答え、またしくしくと泣き続けた。
『スケート?』彼女は不思議に思って周りを見回した。そこは生命力に溢れた鮮やかな緑色をした木々に囲まれ、泣いている少女の横には限りなく透明に近い色をした湖が広がっていて、どう見ても夏になる準備が出来てる森の表情だった。
『毎日練習しないとお母さんに怒られちゃうの。』少女はそういう表情をして、さらに泣き続けた。『ごめんなさいね、スケート靴ではないけれど、』
彼女は気がつくより先に手に持っているモザイク柄のトゥシューズを少女に渡していた。もう彼女は不思議に思う事を諦めて、その続きを待ってみた。
少女はそれを受け取るとモザイク柄のリボンをするするとほどき、軸足に履いて立ち上がり、自分の足に馴染んでいるのを確かめるようにつま先で地面を叩き、何度かジャンプした。そして彼女に向かってお礼を言い、湖の方へ駆け出して行った。彼女はさすがに驚いて少女に声をかけたが、少女は既に湖の上で踊りはじめていた。踊り出した少女はさっきまでと違い、嬉々とした表情でしなやかに上半身を使い、氷上の上を駆け巡っていた。
『こおり?』
彼女は初夏の森の中に突然現れた氷の湖に少し戸惑いもしたが、少女のダンスを眺めた。(もちろんもう、飽きれる事も諦めていた。)スケート靴を履いていない少女は、氷の上を滑れないかわりに素晴らしい表現力で上半身を動かし、軸足のつま先でジャンプして、本当にスケートをしているようだった。

『ククククク。』

ふいに小さな笑い声が聞こえたので、彼女は笑い声のする方を見た。そこには2本足で立ったつるりとした額の犬がいて、尻尾だけがパタパタと揺れていた。
(犬?まぁもう何でも良いわ、、)『ねぇ、あなた誰?』
犬は話しかけられた事に少しだけ驚いて、シルクハットを被り直し(シルクハットには[ I LOVE YOU WITH ALL MY HEART ]と書いてあった。) 尾っぽをパタパタさせたまま彼女に向かって話しかけた。
『やぁ。
ごめんね笑ったりして、君があの女の子の世界に紛れ込んだ事に気がつきもせず普通にしているのが可笑しくって。けどこの世界に僕以外で入れたのは君だけなんだよ、ここはあの子の夢の、、、、』


そこで彼女は目が覚めた。
あのへんてこな犬が『夢の、、』って言ったお陰で彼女は夢だという事に気がつき目が覚めた。彼女はそう確信して、額の汗を拭きながらカーテンを開けると、昨日と同じ白い風船が浮かんでいた。そして今日はその下に花畑があるのも見えた。けれども昨日と違うのは、ひとつだけ白くない風船があることだった。そしてその風船には夢に出てきた女の子が楽しそうにスケートをしてる風景が描かれていた。





僕はthe smithsの歌詞をランダムに口ずさみながら、黄色い花の咲いた花の方へ行き、風船の紐をほどいた。風船の中に描かれた女の子の笑った顔が小さくなっていくのを眺めていると、空からはちいさな雨粒が落ちてきた。






2012/07/10

雨男。


「また雨みたいね。」

昨日の夜に送られてきた彼女のメールを読み返し、彼女の予言通り(といっても、誰が予測しても今日の雨は確実だったんだけど)に降り出した雨と、僕の前を行き来する人たちをぼんやりと眺めていた。雨の日に歩いている人たちは工場のベルトコンベアの上を流れていく大量のクッキーのように、無感情に傘をさし、そして下を向いて黙々と歩いていた。僕はそんな事を思いながら眺めていたけれど、そのうち眺めるのにも飽き、目ついたカフェに入った。白が基調のこじんまりとした店内には、マッチ箱みたいなテーブルとマッチ棒みたいな足のついた椅子が不揃いに並んでいてた。
僕はそこでビールを頼み、the smithを聞きながら、また新しい気持ちでぼんやりと雨を眺め始めた。少し強かった雨も次第に弱くなり、2杯目のビールを頼もうとしているところで、待ち合わせの場所に彼女が歩いてくるのが見えたので、僕は勘定を済ませて駅前に戻った。

『ごめんなさい、また遅れちゃって。』傘を少し傾けて、彼女はいつも通りの挨拶をした。そして僕はいつも通り微笑んだ。
『君の勝ちだね。』そう言って僕が傘をさすと、『あなたと約束するといっつも雨ね、』
そう言いながら自分の傘を閉じて僕の傘の中に入ってきた。
『でも嫌いじゃないわよ、あなたの降らす雨。ほら、こうやって丁度一緒にひとつの傘に入れるくらいの雨だし、もしあなたの降らす雨がどしゃ降りだったら、二人とも真冬のキリギリスみたいに下を向いて黙々と歩かないといけないじゃない?』
彼女は僕を見上げてニコリと微笑んだ。
『でも、雨が降ったからあなたがお酒をご馳走してね。』


僕らは晴れの日より少しだけ近づいて歩き出した。


2012/07/06

iroha 7th anniversary party !!!!



金沢の取引先のirohaさんの7月7日の7周年パーティーでトークショーをやることになってました!
告知遅くてすみません。。


当日はトークショーに加えて、色々とあるんですが、
な、なんと(こういう言い回しも出来るんです。) wallflower by jun okamoto もささやかながら出店します!
し、しかも(こういう言い回しも出来るんです。) 僕が自ら完全接客です!
いつもならふわりと話して、あとは敏腕店長に任せるのですが、今回は一人なのでそうもいかず。。


ということで、金沢の皆さん、そのまわりの県の方々、是非お越し下さい!!!




iroha 7th Anniversary Party★☆☆☆☆☆☆

2012. 07.07 (土) @ 金沢市民芸術村 

open 18:00 start 19:00 

ticket 3,500yen (学生 2,500yen)
※芸術村内のふたつのスペースを使用してのイベントになります。場所にご注意ください。
※学生の方は、受付にて学生証をご提示ください。


◆Talk Show (アート工房)

JUN OKAMOTO デザイナー岡本 順氏によるトークショー

テーマを「洋服たちの、それぞれのストーリー…」と題し
服が生まれるストーリー・お客様に伝えるまでのストーリー・コレクションの裏側など...
JUN氏とiroha、それぞれ異なる立場からのお話を座談会形式でお送りいたします。

こちらの企画は、将来アパレル関係を目指す&興味のある学生の皆様にも聞いて頂きたく思い、 学生価格をご用意致しました。お気軽にご参加を!

JUN OKAMOTO / デザイナー岡本 順
http://www.junokamoto.com/
1975年生まれ1997年文化服装学院を卒業後、パリのStudio Bercot に入学。
Arexandre Matthieuのアシスタントを経て、自身のブランドを2002年より、パリを拠点にスタートさせる。
2007S/Sより東京での展示会もスタートする。
2008A/Wより障害を持った方たちの織る『さをり織り』や、障害を持った方たちの描く絵とのコラボレーションを初め、2010S/SよりJUN OKAMOTO BLUEとしてスタート。
2009-10AWよりユニセックスラインをスタート。
2010年より拠点を東京に移す。
2011年、故郷の熊本にパターンオーダーをメインとした自身初のショップ「wallflower bu jun okamoto」をオープン。
2012S/Sよりユニセックスラインをメンズラインとし本格的にメンズラインをスタート。
2012-13AWにて東京コレクションデビュー。


◆LIVE (アート工房)

赤い靴 - 神谷洵平(Dr) 東川亜希子(Vo&P) -
http://www.myspace.com/1004955740

メルヘンな歌詞の世界観と、独特なポップスセンス。
文学的な歌詞と、フォークロアかつメルヘンで神秘的なサウンドアレンジを作り出す赤い靴。
メンバーは、女優 香里奈の出演するニッセンのCM曲「ハッピー☆キラ」(2010)も話題となった
シンガーソングライター東川亜希子(Vo&P)と、羊毛とおはな、コトリンゴ、大橋トリオ、Predawnなど
数々のアーティストやバンドのサポートドラマーとして活躍中の神谷洵平(Dr)の二人。
そして、歌詞の世界観を更に広げるのは、micca(大橋トリオの作詞家)、羊毛(羊毛とおはな)、Predawn、ほか演奏には大橋トリオ、コトリンゴがピアノで参加。


◆ iroCafe 15:00~18:30 (里山の家)

*こちらはチケットフリーでご入場できますが、ご飲食代金は発生しますのでご了承くださいませ。

金沢市郊外の古い農家を移築した里山の家に、この日だけの特別カフェがオープンします。

efuca.ユカさんのパートナーが営む、知る人ぞ知る東京代々木上原 「The bageLand」 のベーグルたちが金沢初登場。 そして、鱗町にひっそり佇む隠れ家イタリアンのお店 「Taverna Gappa」。

この両店にご協力頂き、ティータイムにぴったりなこの日だけの”コラボメニュー(限定)”をご提供いたします!
ドリンク類(コーヒー・紅茶・ジュース等)もご用意しております。
Talkshow & Liveまでの時間、 こちらでゆったりとおくつろぎ下さいませ。

The bageLand  http://blog.efuca.ciao.jp/
Taverna Gappa  http://tavernagappa.blog25.fc2.com/



<チケット取扱店>
iroha / 076-264-0783 info@iroha-kanazawa.com
MACHINO-hanayasan / 076-240-8855


共催 : toridori

お問い合わせ : iroha 076-264-0783

2012/06/18

中川正子写真館 in 熊本



ー ル・ステュデイオは銀座のメゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
本年度『“時”の恵み』をテーマに、さまざまな角度から映画の中のときの表現をお届けします。
6月は膨大な作品を残した現代の孤高のアーティスト「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」を紹介します。ー



僕の好きな場所です。
週末だけのプライベート映画館。完全予約制で、無料で観れます。
まず、1階のエレベーターの前にエルメスのスタッフが出迎え、名前を確認します。
確認が取れたところでシルバーのドアが開き、エレベータに案内されます。
スタッフが素早く10階を押すと、そのエレベーターは10階まで音も立てずに連れて行ってくれます。
エレベーターの奥にはスカーフのモチーフがガラスの枠を隔てて飾ってあり、それは階ごとにスカーフの色が変わる仕組みになっています。
上に行くと、小さな素敵なパンフレットと共にキャンディーをくれます。
40席程のオレンジ色の心地よいマットのついた椅子のある部屋で、僕らは後ろの方の席を選び、座りました。
映画が始まるのを待っていると、僕らの前の席に女性がやってきて、座りました。
姿勢の良い彼女は、艶のある髪を顎のラインで真っ直ぐに切り揃えていて、小刻みにヒールの音をさせながら、シートよりもう少し深い、エルメスらしいオレンジ色の薄いウール素材のワンピースを着ていました。
右手には小さなバーキンを持って。


僕はこういう風景に出会うと凄く嬉しくなります。
その人がその場所にそこの洋服で着飾っていく、お洒落と尊敬の気持ちで。
そして僕はいつもと同じように、自分もいつかそういう場をつくってみたいなぁと想像します。。。。。


久しぶりにそういう感情を思い出したと思って、、って、そこで思い出しました。





中川正子写真集『新世界』の巡回展を記念して、一日限りの『中川正子写真館』を開催します。

写真展の開催地であるtetorigardenとwallflower by jun okamoto とのコラボ企画として、
[中川正子]×[tetorigarden]×[wallflower by jun okamoto]
をキーワードに、
繋がりのある写真撮影を行いたいという思いを込めて、ドレスコード的なものを設ける事にしました。

といってもそれは、
正子ちゃんの写真集だったり、tetorigardenで切り揃えた前髪だったり、wallflowerで仕立てたワンピースだったり、皆さんの手元にある、「繋がり」と一緒にお越し下されば結構です。
もちろん、写真館当日に繋がる事も大歓迎です!

そしてその繋がりをベースに、
僕(JUN OKAMOTO デザイナー)が着方をアドバイスしたり、剛くん(tetorigarden)がスタイリングをしたりして、最後に中川正子ちゃん(写真家)に撮影してもらい、その場でオリジナルのシートに張り付けお渡しします。



日時 : 6/25(MON) // 11:00~19:00
場所 :
tetorigarden (http://www.tetorigarden.com/),
wallflower by jun okamoto (http://ameblo.jp/wallflower-by-junokamoto/)
参加費 : 1500円(実費として)



そう、
僕がエルメスのプライベート映画館で見た風景を、
僕の場合は中川正子ちゃんのプライベート写真館として、

開催します。


みなさん、ドレスコードを楽しんでお越し下さい。







2012/05/28

とある庭師のはなし。


僕はせっせと黄色い花の苗を植える。
僕のだと分かるように白い風船を付けて。



彼女は小さな窓から白い風船を眺めていた。毎日少しずつ増えていく白い風船を眺めるのが彼女のささやかな楽しみだった。彼女はその風船について一度だけ母親に訪ねた事があったのだが母親には見えていないことを知ると、彼女だけの秘密の楽しみになった。ある日、犬のかたちをしたガラス製の置物を看護婦が落として割ってしまった事があった。その置物をとても大切にしていた彼女は、看護婦の方が気の毒になるくらい哀しみの中に閉じこもった。
そして彼女はその哀しみの分眠り、起きる事をやめた。

『やぁ。』

彼女は、犬が話すのは(当たり前だけど)初めてだったので驚いたが、気を取り直して何かを言おうとした。

『あっ、ごめん、君は話せなかったね。』

犬は当然のようにそう言って話を続けた。

『けど、僕は君にいろんな話を聞いたよ、とは言っても心の声だけれども、、君の病気の事や、家族の事、あっ、それに不思議な風船の事も。』

彼女は嬉しくなり、犬と同じように話しかけようとしたが、やっぱり声が出なかった。

『大丈夫、僕には君の言いたい事は聞こえるから、うまく説明出来ないけど、わかるんだ。そう、僕はこの間看護婦さんの不注意で粉々にくだけた、ガラスの置物だよ。君があまりにも哀しみの中に閉じこもってるから我慢出来なくって。大丈夫、僕は粉々になったけど、粉々にはなっていない。うーん、かわりにこんなに毛むくじゃらになって本物に犬みたいになってしまったけど、ほら、こうして君とおしゃべりも出来るし。』

彼女はさらに嬉しくなって、いろんな事を(頭の中で)話しかけた。

『待って、そんなにたくさんの事を一度に話しかけられても、うまく聞きとれないんだ、実はこうやって話す事自体、すごくエネルギーを使う事だし、ほら、君の夢の時間だってそんなに長くないんだから。。』

『ゆめ?』彼女はハッとしてあたりを見渡した。
彼女がいつも寝ているベッドや犬の置物が置いてあった小さな棚やリンゴやバナナなんかがきれいに入っている籐籠なんかは全部消えていて、暖かみのある木の床や小さな花柄の壁紙も消え、真っ白な白い壁に囲まれた部屋にいる事に気がついた。次の瞬間、真っ白い壁に小さなヒビが走った。

犬は急に焦り出して、
『あっ、ごめんごめん、気づかせちゃだめだったんだ。夢って気がついたら長くはいれない仕組みになってるんだ、ほんと不便な世の中だ、違うや、夢の中だね!あぁ、もう時間がないから伝えたかったことだけ伝えるね。まず第一に、僕は違うかたちで君の元へと帰ってくる、だからもう落ち込まないで。そして二番目、本当に言いたいのはこっちなんだけど、君はひとりで沈黙の世界の中にいて孤独を感じていると思う、けどその代わりに君にはあの白い風船が見えるんだ。もっとよく見てごらん、きっとそれは君にとって、、、ひ、、、、。」


そこで彼女は目を覚ました。

小さな窓からは明るい光が差し込み、ベッドの脇には母親が心配そうな顔をして眺めていた。彼女は久しぶりに笑顔を見せ母親に『おはよう』と口を動かした。母親は少し涙を見せたがすぐに彼女に微笑みかけ抱きしめた。
久しぶりに見た窓の外には、その分だけ多くの白い風船が遠くの丘にある花畑から伸びていた。彼女はその中に真っ白ではない風船をひとつだけ見つけた。目を凝らしてよく見ると、そこには粉々のガラスの破片のまわりで立ち上がって流暢に話している犬と熱心に聞いている彼女の姿が、夢の中の世界が映っていた。



風船を付けていた苗に黄色い花が咲いているのを見つけた。そして僕はいつものように風船を見上げてみると、真っ白い風船には、キラキラとした破片の中で、女の子と犬が向かい合って話しているようなドローイングが描かれていた。
僕はそれを確認すると結びつけていた紐をほどき、風船を空へと飛ばした。



2012/05/18

中川正子『新世界』巡回展と、すべてのフェットのために。


パリ時代、妹みたいな存在だったkanokoちゃんがnew yorkで作っているキャンドル[LAND]。

東京に出てきた頃いつも一緒に展示会をやっていた同じ誕生日のfooちゃんの作るアクセサリー[LiniE]。

地方のお店の最初の取引先で、今もずっと続けてくれてて今では兄貴的存在の竹森さんが販売代行をやっているシューズ[Zahire]。

JUN OKAMOTO の洋服を置いていない僕のお店 wallflower には、いつの間にか僕の好きな人たちがつくる物に溢れたお店になっていました、本当に家に好きな物を並べていく感じで。

そして僕の家にやってくる友達のように、wallflowerにやってくるお客さんたちは部屋の中にある洋服のパターンと生地を選び、wallflower × ○○な洋服をつくりに来てくれるようになりました。
結局それは、JUN OKAMOTOの洋服ではないけれど、ある意味では僕自身とのコラボレーションなんだなと、思うようになりました。

ありがとう。




wallflower by jun okamoto が 6/3で一周年を迎えます! パチパチ。

それを記念して、大好きで大切な友達の中川正子ちゃんの写真展『新世界』の巡回展をやらせてもらうことになりました!!  パチパチパチ。

僕の家に、今度は好きな人の写真を飾るんです。

wallflowerは手取り神社の参道に面しています。
僕はこの参道が大好きで、この参道を歩きながら正子ちゃんの写真を見てもらいたいなという想いから、お隣さんでもあり、僕と同じように参道を愛している美容室に見えない美容室[tetorigaeden]との共同開催をすることにしました。   パチパチパチ。


隣のいい感じの家が前から気になってて、気がついたら仲良くなってて、じゃぁお互いの友達を集めてフェット(パーティー)をしようかって感じですね。




ということで、
6/3には、僕と正子ちゃんと[tetorigarden]のオーナー剛くんとの3人のトークショーと正子ちゃんの友達のサボテン高水春菜さんのライブと、この参道で一番愛されているお店[DECORARE]さんに料理を頼み、フェットを行います。

詳細です。

2012.06.03~07.02 写真展 "新世界"
in wallflower by jun okamoto & tetorigarden


06.03 Opening reception & Anniversary party!!

15:30~ トークショー
"それぞれの新しい世界について"
中川正子 × 岡本順 × 若松剛
16:30~ サボテン高水春菜 スペシャルライブ

in ギャラリーキムラ

18:30~21:00 オープニングレセプションパーティ

in wallflower by jun okamoto & tetorigarden

food & wine by DECORARE


トークショー&ライブは予約制となっているので、下記までお問い合わせ下さい。

wallflower by jun okamoto
096-223-5642
mail; wallflower0603@gmail.com



お近くじゃない方も是非!


パチパチパチ。







2012/05/02

ルージュマジック。


シャンパンで一杯になったスーツケースを引きずりながら彼女は僕の目の前に現れた。
僕の大して何も入っていないスーツケースと一緒に駅の荷物置き場に預け、僕らは歩き始めた。美術館にはシャガールの絵が並び、ジャスミンの花は咲き乱れ、愛想の良い猫とおいしいロゼワインがあり、真っ白なミロの祭壇があり、立ち寄った魚屋では大きな牡蠣と白ワインをサービスしてくれた。海の見えるホテルからは約束通り海が見え、坂の途中には何もかも丁度いい具合のカフェが並び、心地いい風が吹いていた。
山の上には協会があり、大きな犬と大きな家族の赤い屋根の家があり、男たちは笑いながらリカーを飲み、マルシェにはエスパドリューが積み上げられていた。

何年か前、僕らはそういう風に南仏を旅した。
いい思い出だ。

そして今年、カンヌから現れた彼女は、またフランスへと旅立つことを決めた。
赤い口紅でクールに決めて。

いつもより深めにパナマ帽を被り、いつか飛び立つ飛行機の音を聞きながら、僕はひとりで乾杯をした。


雨上がりの夜空に。


荷造りが終わり丁寧に封をして、送り先にきちんと宛名を書き込んだ後、僕は宅配会社に電話をかけた。フリーダイヤルの向こう側の声は予想以上に僕を落ち込ませたけれど、足元でしっぽを振っている犬の頭を撫で、気を取り直してipodのスイッチを入れる。

当たり前に流れてきた音楽は力強い歌声でホットなメッセージを歌っていた。
そこで僕は、彼の命日だったことを思い出す。

何年か前のこの日、訃報を聞いた僕は彼の音楽を大量にipodに詰め込み、雨の上がった道を高速バスに揺られながらパリへと旅立った。

なんて事を思い出していると、たまらなくビールを飲みたくなり、雨の上がる気配すらない庭を眺めながらビールを飲みだした。
何本目かに手をのばそうとした時にドアのチャイムが鳴り、雨が降っている事すら気づいてなさそうな素敵な笑顔をした宅配業者に荷物を渡した。

あの頃のパリ行きのチケットとは違い戻る予定のない荷物だね、なんて犬に話しかけ、僕はもう一本ビールを取り、今度は彼の命日に乾杯をした。


気がつくと、外には雨上がりのすっきりした夜空が広がっていた。







2012/03/22

とあるコレクションについて- no.2


カーテンを開け春の暖かい光を浴びる。
(それから暖房をいれる)
グレングールドのレコードに針を落とす。
(ほんとはパソコンを開き、iTunesを開く)
年代物のエスプレッソマシーンでコーヒーを淹れる。
(ほんとはペーパーフィルターをきれいに折り、お湯を注ぐ)
彼女のおでこにそっとキスをする。
(ほんとはドーナツを齧る)


という日常の中、
明日(3/23)にJUN OKAMOTO初のインスタレーション形式でのファッションショーを行います(ほんとうに行う)。

渋谷パルコパート1のエントランスでの野外ショーとなるので、どなたでも観る事が可能です。
テーマの物語の世界を切り取ったような、繊細でハッピーなショーにしたいと思っています。
お近くの方は是非見にきてください。


3/23(金) / 渋谷パルコ パート1 公園通り広場
/ 21時と22時の2回のショーを行います。

22時の回にTOKYO FASHION FILM(http://www.tokyofashionfilm.com/)にてustream配信もされますので、是非ご覧下さい。

☆ 


[ 花束・マジック・グレングールド ]

1- トランプをよく切って、相手にいちばん上のカードが何のカードか憶えてもらいます。

2- そのカードをトランプの真ん中にさしこみます。

3- おまじないをかけます。

4- いちばん上をめくると、先ほどみてもらったカードが出てきました。

難易度 : ★☆☆☆☆

僕はそれを眺め、それから種明かしの方も眺める。

そうやって、自分にも出来そうな手品を見つけ出し、透き通った冬の空気のようにピンとした真新しいトランプをカットし始める。

とても注意深く、そして自然に、僕は一連の作業を繰り返す。

「あなたの選んだカードはこれですね?」

僕は彼女の代役の犬に向かってそう言い、一番上のカードをめくる。

犬は出されたカードのにおいを真剣に嗅いでいたが、食べ物じゃないとわかるとどこかへ行った。

そして僕は、クスクスと笑う彼女の事を想像しながら、練習を繰り返し、おまじないの言葉を考える。

           ☆

雪が降り出すと、彼女はいつも涙する。

いつものように、僕はそっとグレングールドのレコードをかける。

彼女は自然とグレンのピアノにあわせてハミングする。

ドアベルが鳴る、ハミングは当たり前のように鳴り止まない。

かわりに僕がドアへと向かう。

雪とピアノに心を奪われていた彼女が、花の香りに気がついて僕を見る。

気がついた彼女に向かい、僕は微笑みかけ、花束を差し出す。

彼女も少しだけ微笑んで、花束を受け取ろうとする。

僕は、

微笑んだまま、

花束をコートの中に隠した。

彼女は少し驚いた。

「ワン・ツー・スリー」

僕はそう言ってコートをめくると、花束は消えて、コートの一部になっていた。

雪はもうやんでいたのに、彼女はまた少しだけ泣いた。

僕はまた彼女に微笑みかけた。

彼女はようやく微笑んだ。