2011/07/09

言い訳。

暇だ。

最初に出された水からは、僕の占拠しているテーブルの上を縦横無尽に水滴が攻めてきて、
僕の飲んでいたビールのグラスは片付けるのが追いつかない程、急ピッチで増えていった。

カオス、

を見事にテーブルの上で作り上げた時、携帯電話は既に僕に語りかけるのを諦め、
持って来ていた読みかけの本は行間まで読み終えた僕は、他にやる事も無く、
見える限りのそこにいる客とスタッフの動きを完全に把握してしまっていた。
小綺麗に髪をまとめた耳のかたちのいいウエイトレスは、遠慮がちに何度も僕に話しかけてくれたのだけれども、
何か欲しいものがあるときは自分から頼むから、と言って以来ぱたりと姿を消した。
僕は十分すぎる程苛ついていた。。
コップの周りから溢れ出す水滴も、空のコップも、空の灰皿も、会話が出来るんじゃないかと言うくらいまで眺めた。
もう僕にはこれ以上時間を潰す方法を思いつく事は出来なかった。
それを見つける事が出来たら、きっと僕はそれを本にでもして、、、そうか、小説の続きを書こう、と僕は思い、、
なんて、僕は小説家でもなければ、小説をまともに読んだこともないんだった。

これ以上つまらない事を考え出すと周りにも迷惑になると思った僕は、諦めて電話をかける事にした。

『やぁ。』

彼女はまるでさっきまで一緒に過ごしていた恋人みたいに親密な甘い声で、僕に200回目の言い訳をした。

日は沈み、他にする事も思いつかないので、僕は耳のかたちの綺麗なウエイトレスを呼び、さっきの自分の態度を謝罪し、
テーブルの上の邪魔なものを下げてもらい、新しくこの店で一番冷えたビールを頼んだ。

冷えた旨いビールを一息で飲んだ僕は、彼女を好きな自分に呆れて、小さなため息をついた。

0 件のコメント:

コメントを投稿