2011/12/24

朝の風景/彼女の目覚め/メリークリスマス。


微かな光とそのぬくもりに、少しだけ意識が冴える。
その光の当たり具合でおおよその時間を考える。。

いつものようにカーテンの隙間から空を眺めている彼を、ベットの動きで理解する。
犬がごそごそと動きはじめる。。

おでこに温もりを感じる。
同時に少し幸せになる。。

温もりの詰まった楽園に、冷たい空気が忍び込む。
私は少しだけ眉をひそめる。。。




ふいに、淹れたてのコーヒーの香りに包まれる。
幸せな香りと、同時に幸せな覚醒が始まる。

私は、彼の大きなニットをかぶり、コーヒーの香りのする方へ歩く。


『おはよう。』
私はコーヒーを淹れている彼に言う。
『メリークリスマス。』
八重歯を見せながら彼はそう言い、私にコーヒーを差し出す。


私はコーヒーを受け取らず彼に手をまわし、キスをする。



テーブルの上には、朝食と、着飾られた小さなもみの木が輝いてる。



朝の風景/彼の目覚め-2

カフェには淹れたてのコーヒーの香りが、
ブロンジェリーにはあたたかなパンの焼けた香りが、
八百屋には瑞々しい香りが、
花屋には甘すぎずきりっとした香りが、

僕は白い息を吐きながら、冬の朝の香りを吸い込んだ。

後ろから行儀よくついて来ている犬を何度か確認しながら、
八百屋でオンディーブと枝つきのトマトを、ブロンジェリーでは焼きたてのバゲットを買い、それぞれの店主と軽く挨拶を交わした。

朝の風景。

そして最後に赤ちゃんの握りこぶしくらいの白いラナンキュラスを3本ほど買い、冬らしく軋む木製の階段を犬を一緒に駆け上り、静かに扉を開けた。

部屋の中はさっきと同様、朝の気配に満ちていた。
きっと蟻の足音さえも聞こえるだろう静寂があった。

玉葱とトマトを手頃な大きさに切り、小さな鍋の中で少しだけ炒めて、水を注ぎスープストックと入れ、塩コショウをして最後にオンディーブを入れスープを作り、
窓際にあるバジルの鉢植えから大きい葉を何枚か千切り、溶いた卵の中に入れオムレツを作った。
バゲットは半分に割り、縦にナイフを入れ、あたたかいうちにバターを塗った。

犬はバゲットを切る際に落ちたパン屑をきれいに掃除してくれた。

お湯の湧く音を確認して、ペーパーフィルターに盛ったコーヒー豆の中に注意深くお湯を注ぎ入れた。
一瞬にして、湯気はコーヒーの香りに包まれ、それは僕の鼻を通り心地よく覚醒へと導き、この部屋全体も優しく包み込み、静かに覚醒していった。







2011/12/22

朝の風景/彼の目覚め-1


カーテンの隙間から冬の朝日が差し込んで、僕の塞ぎきった瞼をじんわりと赤く染め始める。その暖かみに反応するように、僕の脳の奥底にひそんでいる、素潜りの名人が気圧に逆らわないように、ゆっくりとその光に向かって上っていく。
そうして目を覚ました僕は、そのままぼんやりと冬特有の雲ひとつない洗い立てのなシーツのような青空を眺めていた。

僕は静かに目を覚まし、静かに空を眺めていた。

足元で寝ていた犬がごそごそと僕の顔のところまで上がってきて、何かを語るように耳元に鼻を押し付けてきた。
もちろん僕には何を語りたいのかは分かっているのだけれども、
それでも毎朝、足元で寝ているのにも関わらず、いつも僕の目覚めに気がつく犬に感心して、
世界の目覚めには、全く関心がないといった感じで、静かに寝息をたて続ける彼女のおでこに軽くキスをして、冬の冷気を侵入させないよう少しだけ布団をずらし、ベットから出た。

振り返ると相変わらず同じ体制で寝ている彼女の顔の一部に朝日が降り注いでいた。
何ものも含まれていない冬の冷静な光が、彼女の透けるような白い肌をそのまま含み、持ち去ってしまうのではないかという不安にかられ、僕はカーテンをきちっと閉め直し、台所へと向かった。

僕はまず、静かに先回りしていた犬にビスケットを何枚かあげ、彼が食べている間にフラネルのガウンをはおり、やたら長い彼女のモヘアのマフラーを首に巻きつけて、厚手のウールの手袋をつけ、静かに扉を開けて犬の散歩に出かけた。


2011/12/08

朝食のための小さな準備。


1- トランプをよく切って、相手にいちばん上のカードが何のカードか憶えてもらいます。
2- そのカードをトランプの束の真ん中にさしこみます。
3- おまじないをかけます。
4- いちばん上をめくると、先ほどみてもらったカードが出てきました。

難易度 : ★(☆はあと4つ並んでいる)


僕はそれを眺め、それから種明かしの方も眺める。
そうして僕は自分にも出来そうな手品を見つけ出し、透き通った冬の空のようなピンとしたトランプをカットし始める。
とても注意深く、そしてさりげなく自然に(そう種明かしの欄に書いてあった)、僕は一連の手品の練習をする。

「あなたの選んだカードはこれですね?」

と僕は犬に言い、一番上のカードをめくる。
犬は何かをもらえると思い、出されたカードの上を黒い小さな鼻で嗅いでいる。


僕はクスクスと笑う彼女の事を想像しながら、
おまじないの言葉と、明日の朝食のメニューを考える。



2011/12/06

(ある意味では休日の)朝食。


二日前の朝食に、僕らから奇しくも選ばれなかったpain aux raisins。
オレンジジュースをいれ、温めなおしたコーヒーをカップにそそぐ。

残された犬と向かい合う肌寒い平日の朝。

アイロンをかけていないガウンを着て、僕の思いとは全然ちがう方向を向いている髪の毛。

向かいの椅子に座っていた犬は、僕がぽろぽろと落とすパン屑を期待して、足下から僕を眺めている。
急に騒ぎだした携帯には、旅行に出かけた彼女からの[ちゃんと起きてる?]の文字が浮かび上がる。

僕は少しだけ幸せな気持ちになる。

台所の隅に転がっている、ゆでられる予定だった生卵に同情しながら、僕はまたベットに戻る。




2011/12/05

My fake plastic love

夢。

毛のあまり生えてない白い犬がいた。
彼(彼女?)、、、いや、やっぱり彼女だ、
彼女には子供がいた、彼女に良く似た、毛が殆ど生えてない肌、まばらに生えてる長い白い毛、を持った子犬、、、、違う、目を離した隙に成犬になってる。

僕はその二匹を見ている、ゴムの木になって。
惨めなゴムの木。。
けど、いや、だからこそ、僕は光を感じる事が出来る。
光合成。

それが、その白い犬たちの、役に、立つとは思わないけれど。。

そこで僕は一度目を覚ます。

別の夢。

今日、いや、明後日、僕の知っている犬が死ぬ、らしい。

白い長い毛を持った、いや、白く縮れた毛を持った犬だ、僕は何故だか彼の事を昔から知っている。

僕は思う、君が望むような人間になれたらと、
彼女は言う、あなたの望むように生きなさい、と。

けど、きっと明後日には僕の知っている、仲間が、一人いなくなる。


僕は思う、そういう別れ、別れ?
そのあたりの出来事をひっくるめて、見続けようと。
だって僕はゴムの木。
その気になればなんだって出来る、さ。