2011/12/24

朝の風景/彼の目覚め-2

カフェには淹れたてのコーヒーの香りが、
ブロンジェリーにはあたたかなパンの焼けた香りが、
八百屋には瑞々しい香りが、
花屋には甘すぎずきりっとした香りが、

僕は白い息を吐きながら、冬の朝の香りを吸い込んだ。

後ろから行儀よくついて来ている犬を何度か確認しながら、
八百屋でオンディーブと枝つきのトマトを、ブロンジェリーでは焼きたてのバゲットを買い、それぞれの店主と軽く挨拶を交わした。

朝の風景。

そして最後に赤ちゃんの握りこぶしくらいの白いラナンキュラスを3本ほど買い、冬らしく軋む木製の階段を犬を一緒に駆け上り、静かに扉を開けた。

部屋の中はさっきと同様、朝の気配に満ちていた。
きっと蟻の足音さえも聞こえるだろう静寂があった。

玉葱とトマトを手頃な大きさに切り、小さな鍋の中で少しだけ炒めて、水を注ぎスープストックと入れ、塩コショウをして最後にオンディーブを入れスープを作り、
窓際にあるバジルの鉢植えから大きい葉を何枚か千切り、溶いた卵の中に入れオムレツを作った。
バゲットは半分に割り、縦にナイフを入れ、あたたかいうちにバターを塗った。

犬はバゲットを切る際に落ちたパン屑をきれいに掃除してくれた。

お湯の湧く音を確認して、ペーパーフィルターに盛ったコーヒー豆の中に注意深くお湯を注ぎ入れた。
一瞬にして、湯気はコーヒーの香りに包まれ、それは僕の鼻を通り心地よく覚醒へと導き、この部屋全体も優しく包み込み、静かに覚醒していった。







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