2010/12/13

井戸

暗く深い井戸の中に居た。

目を開く事も、耳を澄ます事もなく、僕は暗闇の中で心の声に溺れていた。

時折、いや正確には頻繁に、その重く冷たい井戸の扉を開けて話しかけてくれる友人たち。

僕はそういう声で、手さえ見えない暗闇の中で、自分が存在していることを思い出した。

けど、心の声の渦から抜け出す事は出来なかった。

自分から井戸に降りていき、どれくらい経ったのだろう。

気がつくと、真っ暗で何も見えなかった井戸の中でさえ、目が慣れていき、
井戸の底の冷たさで失っていた感覚も、少し回復してきた。


時間。


僕は彼女と話しをした。

色々な事を、割と長い時間かけて。

そしてもっと長い時間をかけて、それまでの景色に感謝した。


 ありがとう。


目の前に青空が広がっている。


気がつくと、井戸から出ていた。



深く重い暗闇。

でも、それを感じたことは、、


きっと自分にとって良かった事だと思う。


うん、思う。