2012/01/21

コーヒーを淹れる前に。


着信に気がつき、大きな液晶に写る彼女の名前を確認して、
「おはよう。」
僕はいつもみたいにカーテンを開ける。
「雪だね。」
と彼女は小さなでつぶやく。

僕は開けたカーテンの先の空を眺める。
ぼんやりと暗い朝の空からは、小さな雨が降っていた。
「こっちは雨だよ。」
僕がそう言ってると、布団の中から寝坊した犬が顔を出してきて、
僕と一緒に窓の外を眺めはじめた。

電話越しに彼女の声が聞こえている。
昨日の夜に映画を見ながら寝てしまったとか、今朝は寒すぎて寝坊しちゃったとか、今朝のコーヒーは、、、
僕は幸せな気分で携帯を耳にあてたまま空を眺めていた。
「雪だ。」
僕は不意につぶやいた。
今日やらなくては行けない事を話している途中かなんかの彼女は、急に話を遮られて言葉を失ったけれど、
「あぁ、雪ね。」
事態を飲み込んだ彼女はそう言い、(きっと微笑んだ。)

僕はいつも、そうやってその日の空みたいに、ぼんやりと彼女の話を聞いて、せっせと自分の話ばかりしていた。






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