2012/03/13

とあるコレクションについて- no.1


朝のゆっくりとした時間の中、窓の外には雪が降っていた。
ベットに座ったまま、膝を抱え、コーヒーを飲みながら、彼女は雪を見て涙した。

「雪のにおいが嫌い。」

黄色の花に満たされた部屋は、春の匂いで埋め尽くされていた。

僕は雪の匂いを少しでも消すために、もう一度コーヒーを淹れる。

そして僕は、いつものように彼女の好きなグレングールドのレコードをかける。
そして彼女は、いつものようにハミングを始める。


本棚にはグレングールドに関する本やレコードが乱雑に積み上げられていた。

彼女がうちに転がり込んできた時に持ってきたものと言えば、大量のグレングールドの本とレコードだった。

彼女は本棚を見つけると、その前に行き、最初に僕の本やなんかをそっくり取り除き、持ってきた大量の本やレコードを並べはじめた。
僕は驚くというよりも、彼女が大量の本やレコードを乱雑に、けれど美しく重ねていく様子があまりにも見事だったので、とりあえずワインを開けて眺めている事にした。
彼女はようやく並べ終わり、僕のワインを一口飲み、最後に本棚の隅に居心地の悪そうに置いてあった骨のかたちをしたぬいぐるみを犬に渡した。
彼は珍しくそれを受け取り、自分のお気に入りの場所に持って帰った。


「素敵なグレンチェックね。」

彼女はそう僕に話しかけてきた。
僕は少し戸惑ったけど、自分がグレンチェックのガウンを着ていた事を思い出し、お礼を言った。
そして彼女もグレンチェックのワンピースを着ている事に気がついた。
けれど僕は素敵なグレンチェックにではなく、僕の財布の色と同じ真っ青な色をしたワンピースについて褒めた。

「ありがとう。」

そう言って、彼女は足元にいた僕の犬を触りだした。
そのまま彼女は目の前のテラスを指差し、僕らを誘った。

彼女はワインを飲みながら、よく話した。
グレングルードの音楽が好きで、グレンチェックが好きだと言う事について。
僕が少しだけ笑うと
「みんな大抵そうやって笑うのよ、でも本当なんだから仕方ないの。」
そう言いながら犬の頭を撫で続けた。

それが僕らの出会いだった。









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