そこには、どこかの伝説的な勇者が銅像になった時にみんなが揃って持っている盾みたいに大きく、その盾に必ずついている獰猛なライオンが牙を剥き、どこかの国で威張っている戦車みたいな深い緑色をした、大きな大きな扉があった。
両親はその扉を300年以上前の扉だとよく自慢していたが、
僕にとってはそんな事はどうでもよく、出かけるときは重いだけでうんざりするような扉だったんだけれども、
帰ってくる時には、大きな口を開けて出迎えてくれるライオンに僕はいつも『ただいま。』と言うようになり、当時フランスに連れてこられたばかりで学校の連中にも馴染めなかった僕には唯一の話し相手だった。
なんて事を、つるりとペンキを塗られた無感動な扉の前で立ったまま、不意に思い出していた。
彼女が閉めて出て行った扉を眺めながら、僕は酒を飲み彼女の帰りを待った。
どれくらいの時間が経っただろう?
彼女が出て行った時の暗く重く静まりかえっていた夜は明け、明るく生命力にあふれた朝を迎え、太陽はパリにあったライオンの扉みたいに高く登り、やがて沈んでいった。
僕は仕方なく扉に話しかけてみた。
『帰ってくるかな?』
『......』
その無感動なほどつるりとした赤ん坊みたいな扉は、当然だけど、何も言ってくれなかった。
ライオンの扉にさよならを言ってから、たくさんの時間が経ち、たくさんの扉が過ぎ去ってしまっていた。
僕はたまらなくあのライオンのついた扉を見たくなった。
僕は明日の分までため息をつき、つるりとした感触を確かめながら電話を持ち、彼女に電話をかけた。
☆
彼の手にしている電話には、色々な動物の描かれている白いケースが付いていた。
けれど、ここにもライオンの姿はなかった。
☆
という事で、僕がディレクションをしている熊本のセミオーダーのお店『wallflower』で販売しているiPhoneケースが通販出来るようになりました。
そして今、iPhone以外の16機種のスマートフォンを
対象にした受注会を行っています。
8/22までです。
詳しくはwallflowerのブログを見てください。
『かわいいケースってiPhoneばかりでつまんないわ。』
と思っていた貴女、この機会に是非。
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