暗く深い井戸の中に居た。
目を開く事も、耳を澄ます事もなく、僕は暗闇の中で心の声に溺れていた。
時折、いや正確には頻繁に、その重く冷たい井戸の扉を開けて話しかけてくれる友人たち。
僕はそういう声で、手さえ見えない暗闇の中で、自分が存在していることを思い出した。
けど、心の声の渦から抜け出す事は出来なかった。
自分から井戸に降りていき、どれくらい経ったのだろう。
気がつくと、真っ暗で何も見えなかった井戸の中でさえ、目が慣れていき、
井戸の底の冷たさで失っていた感覚も、少し回復してきた。
時間。
僕は彼女と話しをした。
色々な事を、割と長い時間かけて。
そしてもっと長い時間をかけて、それまでの景色に感謝した。
ありがとう。
目の前に青空が広がっている。
気がつくと、井戸から出ていた。
深く重い暗闇。
でも、それを感じたことは、、
きっと自分にとって良かった事だと思う。
うん、思う。
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